Eno.497 葵 夏月

かえってきた、らしい。

帰りの船でも大騒ぎして、なんとか帰ってきた。

帰って来てからもやっぱり大騒ぎで、
あれこれ聞かれたり、あれこれ調べられたりして、
ようやく普段通り……。



……とは、いかないらしい。
戻ってきて再会できた母さんはボロボロに泣いて、
おじさんも何度も何度も、ウザいくらいに身体を心配してくれた。
誰が悪いワケじゃないけれどすごく居心地が悪かった。

が、それも検査やらの諸々が終わるまでで。
戸狩総合病院から退院して、帰宅したオレを待っていたのは家族会議だった。



バイトがバレた。

部活って嘘吐いて時間作ってやってたことを怒られた。
……のは仕方ないとしても。



家、出ようとしたのも一緒にバレた。

オレが行方不明になっている間に部屋に入った母さんたちが
家探しの情報誌を見つけてしまったからだ。
こっちは怒られたどころじゃなくって……二人そろって泣いた。
…………泣かせてしまった。

しまいには再婚したのがそんなにイヤだったのか、とか言い出す始末で。
そんなワケねーよ。父さんが死んでから、7年。少し前までこっそり泣いてた母さんを知ってるし。
おじさんがそんな母さんの支えになりたいって言う話も、何度も聞いた。
二人が一緒になるのは別にイヤじゃねーし……幸せになって欲しい、とも思う。

けれど、それはそれとして。
父さんのものが、痕跡が、消えるのはイヤだ。
……ガキみたいな感情論で。絶対言うもんかと思ってたことを、話した。
話すことになった。



まー、その結果なんやかんやあって。
結局、家を出るのは高校を卒業してからってことになって、バイトも減らされた。
……理由が理由とは言え、いくつかは無断欠勤でクビになってたからある意味丁度良い。

二人はバイトの時間作るために辞めた剣道部も戻るべきだと言ってたけど、
今更どんな顔して戻るかなー、ってのが今の悩みだ。



返ってきた期末テストの点数はまあ、いつも通りで。
学校はいつの間にかあの島のアレソレの話も少なくなってきて。
賑やかなクラスは前と同じ……いや、前以上に、賑やかだ。



「あー……今日……はバイト入ってない日か……。
 おっ、玄乃ー!部活終わったら、直哉んトコメシ行かねー?
 今日、木曜だしさー……――」





ま、そんなわけで。
なんだかんだでオレ達の日常、ってやつはかえってきたらしい。

あの島での日々が少し
 ほんの少し変えてくれた
  今までとは違う日常が。