Eno.512 ジェームズ

無題

それはとある夢物語。

有名なそれに出てくる彼は彼ではない。
いわゆる一つの可能性、バッドエンド、パラレルワールド…呼び方は多種多様だろう。

その少年は気ままであり、自由であり、愚かでもあり……少々優しすぎた。


物語の道筋に反すれば、それは異聞として扱われる。認められない。

その船長と少年とは手を取るべきではない。
船長はより狡猾に少年を追い詰め、
少年はより残酷に船長を貶める必要があった。

ただ、ただ少しだけその少年は羨ましかったのかもしれない。

友である子どもたちは多くいた。愛しい子も遠くの町から連れてきた。

しかし、その島で自由に暮らす彼には、島から飛び出していく自由さはなかった。

彼が羨ましかったのだろう。
島の外で船を駆り、広い世界を自由に旅する彼が。


大人は嫌いだったが、彼の話す話には大人も子供も登場し、
愉快なことこの上なかった。
そう、世界という物語には大人も子供も必要だ。
至極当然なことだったが、愚かな少年はようやくそれに気付いてしまい、
その船長へと手を伸ばしてしまっていた。

………。

その物語は認められない。

世界との繋がりを求めた少年はやがて、
避けられない破滅の物語へと追いやられた。