時空の狭間の歪みにより辿り着く世界の記録――Epilogue
現世に咲く、香りの良く紫の花を咲かせるラベンダー。
ここに、その花によく似た花が咲いていた。
ラベンダーの花言葉、確か一つは―― 「幸せが来る」
――――――――――
烏合の集は大海原を進んでいく。
隣を並んで進んでいた救難船は、数刻前からいつの間にか見えなくなってしまった。
猫耳の子や白衣仲間のような"帰るべき場所のある者"は、各々を送り返す救難戦に乗っていた。
元の世界の情勢や立場的に、のんびりと旅ができる性分ではないのだろう。
我々が奇跡を起こさない限り、しばらく会えないのだなと考えると少し悲しく感じる。
何処かでまた会えるような、そんな気はしているけれど。
話声が少なくなって、色々考えていると、どうにも落ち着かない。
この船はどこに行くのだろう?そこに新たな食材はあるだろうか?
行先のない漂流者たちは、どこに根を下ろすのだろう?
不安のように聞こえるかもしれないが、純粋な興味と好奇心、未来への希望…そういったものにより近い感情だ。
落ち着かないまま、私は水の溜まった革靴を脱いで、木で作られた船内をぐるりと周る。
操舵室にはセーラー服を着た人物が方位磁針を-表情はわからないが恐らく―睨んでおり、
舵の上や船の隅には、別の島へと住処を広げるためか、島を構成していた彼らが数匹乗っている。
倉庫職人の彼女、行く当てのないらしい彼、星の記憶を垣間見た彼、少々不愛想だが情に厚い彼、赤い蝙蝠耳の彼、白いワンピースの彼女。
他にも沢山、特徴的で、頼りになる漂流者たち。
生まれ育った世界も望むものも、帰る場所すらも違う船員たちはさながらアルゴー船の英雄たちのようだ。
…そうやって見回った後、船内の木箱の傍に腰を下ろして感傷に浸っていると、長らく口を噤んでいた水薬の悪魔がようやっと声を発した。
「本当に、賑やかなヤツらだったよナァ」
彼はぽん、と現れると、私のように、甲板に出ている一人ひとりを見やる。
「……そう、だな。みなとても優秀な方々と言いますか。 私も、何か役に立っていればよいのだがな」
こうやって簡単に、卑屈や弱音をぶつけられるほどではないものの。
少なくとも、頼り頼られができるような関係…になれたと願っていたい。
「………にしても、綺麗な海だなァ。人も多くて賑やかだし。コレで島が沈まなけりゃ、最高のバカンスだったってのにヨ」
悪魔は困ったように笑った。
魔法への障害が働いて、話すことができなかったのだろう。彼は魔法の産物だから。
仕方ないとはいえ、こんな時でも笑っていられるのは…やはり危機感のない奴だ。
「では、お前が動けるようになった記念だ。開けてやる」
島に流れ着いた船の大樽から拝借したラム酒入りの瓶を開ける。
手持無沙汰で作った木のコップにそれを半分を注いで差し出すと、悪魔は嬉しそうに口を付けた。
……一度できた縁は意外と切れないものだ。そして、世界は必ずどこかでつながっている。
我々は、それをよく知っている。
「ま、この船から降りても、どうせすぐ会えるだろうサ」とラム酒を味わう悪魔を横目に、
私はこの船旅の終着点と、彼らの未来を夢想する。
我々の旅は、もう少し続きそうだ――……
ここに、その花によく似た花が咲いていた。
ラベンダーの花言葉、確か一つは―― 「幸せが来る」
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烏合の集は大海原を進んでいく。
隣を並んで進んでいた救難船は、数刻前からいつの間にか見えなくなってしまった。
猫耳の子や白衣仲間のような"帰るべき場所のある者"は、各々を送り返す救難戦に乗っていた。
元の世界の情勢や立場的に、のんびりと旅ができる性分ではないのだろう。
我々が奇跡を起こさない限り、しばらく会えないのだなと考えると少し悲しく感じる。
何処かでまた会えるような、そんな気はしているけれど。
話声が少なくなって、色々考えていると、どうにも落ち着かない。
この船はどこに行くのだろう?そこに新たな食材はあるだろうか?
行先のない漂流者たちは、どこに根を下ろすのだろう?
不安のように聞こえるかもしれないが、純粋な興味と好奇心、未来への希望…そういったものにより近い感情だ。
落ち着かないまま、私は水の溜まった革靴を脱いで、木で作られた船内をぐるりと周る。
操舵室にはセーラー服を着た人物が方位磁針を-表情はわからないが恐らく―睨んでおり、
舵の上や船の隅には、別の島へと住処を広げるためか、島を構成していた彼らが数匹乗っている。
倉庫職人の彼女、行く当てのないらしい彼、星の記憶を垣間見た彼、少々不愛想だが情に厚い彼、赤い蝙蝠耳の彼、白いワンピースの彼女。
他にも沢山、特徴的で、頼りになる漂流者たち。
生まれ育った世界も望むものも、帰る場所すらも違う船員たちはさながらアルゴー船の英雄たちのようだ。
…そうやって見回った後、船内の木箱の傍に腰を下ろして感傷に浸っていると、長らく口を噤んでいた水薬の悪魔がようやっと声を発した。
「本当に、賑やかなヤツらだったよナァ」
彼はぽん、と現れると、私のように、甲板に出ている一人ひとりを見やる。
「……そう、だな。みなとても優秀な方々と言いますか。 私も、何か役に立っていればよいのだがな」
こうやって簡単に、卑屈や弱音をぶつけられるほどではないものの。
少なくとも、頼り頼られができるような関係…になれたと願っていたい。
「………にしても、綺麗な海だなァ。人も多くて賑やかだし。コレで島が沈まなけりゃ、最高のバカンスだったってのにヨ」
悪魔は困ったように笑った。
魔法への障害が働いて、話すことができなかったのだろう。彼は魔法の産物だから。
仕方ないとはいえ、こんな時でも笑っていられるのは…やはり危機感のない奴だ。
「では、お前が動けるようになった記念だ。開けてやる」
島に流れ着いた船の大樽から拝借したラム酒入りの瓶を開ける。
手持無沙汰で作った木のコップにそれを半分を注いで差し出すと、悪魔は嬉しそうに口を付けた。
……一度できた縁は意外と切れないものだ。そして、世界は必ずどこかでつながっている。
我々は、それをよく知っている。
「ま、この船から降りても、どうせすぐ会えるだろうサ」とラム酒を味わう悪魔を横目に、
私はこの船旅の終着点と、彼らの未来を夢想する。
我々の旅は、もう少し続きそうだ――……