ただいまの歌 おわかれの歌

海が重なり、歌が重なる。
船の下、寄り添い合うよなハミングが ひとつふたつと増えていく。
嗚呼─── ただいま!
弾む鳴き声高らかに。波間に響いて飛沫を散らす。
あたたかな体温がいやに懐かしくて、甘えるように喉を鳴らしてしまうのだ。
しかし、帰ってきたということは、もうお別れということで。
◇◇◇
お友達を乗せたフネは、遠く遠くに行ってしまうところでした。
陸の生き物と海の生き物。
7日間も一緒にいられたこと。それ自体が奇跡のようでした。
まったくシャチは幸せでした。
陸から聞く潮騒を 好ましく思ってしまうほどには。
◇◇◇
船底から射し込む光に紛れ、
ほんの片時、懐かしい顔と 聞きなれた声。

陸の諸君の行く末に、どうか幸多からんことを!
シャチは高く跳ねました。
大きな声で歌いました。
大きく振った胸ビレが バイバイ!と別れを告げるよう。
今度はちゃんと、見送ることができました。
そうしてシャチは、家族と共に。
あたたかな波に揺られ、雄大な海を泳いで行きました。