Eno.16 ユピター・ヨヴィアル

星廻る日々の先で

いつもは読むばかりで、聞くばかりで、書き残すことなど終ぞ無かったものだから。
こうして何かを、残しておきたくなる衝動に駆られるのは不思議な心地だ。

アルクトゥールスが語り聞かせてくれる毎晩のことが愛おしかった。
その日にあったこと。誰かに会ったこと。雨が濡らした思い出。風が撫でたあの日のこと。

今ならわかる。

かれらに出会い、過ごした日々の輝きに心奪われてしまった今なら。

私の羊飼いアルクトゥールスは愛おしかったのだ。
触れたひとびとの温かさが。時の過ぎ行く寂しさが。

残しておきたかったのだ。
共に在った記憶が、いつまでも絶えぬようにと。

また会おう。

……いや、きっとまた会えるだろうさ。

星が、季節を廻って何度でも、愛しきひとびとと会えるみたいに。