Eno.682 何森究

そして最良の日々を

???
「あ、何森くんだ。お邪魔してま〜す」



キュー
「あれっ、鉄原かなはら先輩。
見に来てくれてたんですか」



鉄原かなはらすばる
私立果ての島高校三年生。美術部員。彫刻科への進学志望。
昨年度文化祭の写真部展示で何森と知り合った。



すばる
「そりゃ同じ美系仲間だもん、写真部の展示はマストだよ〜!」



キュー
「あざす、光栄す。
今年は、佐藤も俺もちょっとした粒揃いだと思いますよ」



すばる
「本当ほ〜んと、どんどんレベル上がっててすごいよ!
……ところで何森くんさあ、作風変えた?」



キュー
「え?」



すばる
「や、ヒネたトコがなくなったっていうか……。
素直になったカンジするんだよね、何となく」



キュー
「……有難いすけど、言われたら言われたで恥ずかしいすね、それ……」



すばる
「あはは、ごめんごめん。
何か心境の変化でもおありで?」



キュー
「あ、えっと。……」



少し考えてから。


キュー
「……あの。ヘンなこと訊くんすけど。
先輩たち、去年の修学旅行って、」



すばる
「なーに?シマにナガサレた・・・・・・・・って話?」



キュー
「う」



あまりにあっけらかんと答えるものだから、俺の方が言い淀んでしまった。


すばる
「何森くんたちも、こないだの臨海学校はタイヘンだったんじゃないの」



キュー
「いや……え?
うちら誰も、大っぴらには話してな……何で、ですか」



ごく一瞬、先輩の瞳が煌めいたように見えた・・・・・・・・・・・・・・・


すばる
「わかるよ。私、勘がいいの。
キミ、サメとかイノシシと格闘した顔になった」



キュー
「ふ、……はは。あははは。
敵わないな、こりゃ……」



観念した俺は、臨海学校中に起こったことを余さず話した。
もちろん、パーソナルな部分を除いてだ。


すばる
「そっか〜、それは災難だったね。お疲れさまだ。
……でもさ。きっと、しんどいだけでは終わらなかったんじゃない?
うちのクラスも、そうだったから」



キュー
「…………。はい」



すばる
「なら結果オーライだ。
無事に戻ってこられてよかったね、何森くん。
おかえりなさい」



鉄原先輩はそう笑ったきり、それ以上シマのことを訊こうとはしなかった。



背中を預け合える友人に恵まれて。
身を寄せ合える相手に出会えた。



身一つでナガサレた果てのシマで、傷痕を掻き毟り合うような恋をした。



歩調が整う。
呼吸が安らぐ。



生きている。






「――あのさあ、ユヅキ」

「これから先の目標として……」

「もしもの話として、聞いて欲しいんだけど」

「いつか、何年かしたらさ」

「俺と、」

「一緒に住まん?」




…………






すばる
「……うわーびっくりした!
嘘でしょ!?ハテコー2年1組ってやばくない!?
ねえ~景!アケチ!どしたらいいと思う~!?」