Eno.42 終末兵器

みずのほしよりこうしんちゅう、はろー!




──



───


特に書くことはない。


海洋世界から、それらの海は吐き出されて、きっと。

それぞれの時代の海に帰っていく。

未来の海は、未来に。
その青い水の星の最期の刻の、針は進み始めてしまった。
少女はもう二度と夢を見ない。
心象世界に迷い込むこともない。

ただただ、冷徹な終末をその星に与えて。
ついに、その星を木っ端微塵に砕くのだろう。
その砕かれた破片は、ついに目標に届いて、打ち壊すのだろうけれど。
結局、大したダメージにはならなかった。

塵すら残らない中で、かすかに残るのは寂しさ。
けれどそれもいつかは無くなって、宇宙空間の寂寞が残るばかりである。


──ああ、でも、今知りたいのは、きっとその話ではない。

きっと話すべきは、語る手はこちら。

現在の話。現在の海。現在の水の星の話をするべきであったのだ。




◇ ◇ ◇





──私は話すべきではない。


私は口を閉ざしている。
本心を語らない。いいや、語っているのだ。間違いなく。
私は私のしたいように動いている。

私は口から言葉を吐き出している。
言葉を考えている。
言葉を願っている。

あなたがたの終末が見たい一心を考えていた。
終末を見なければいけない。─私が満足しない。
終わりを見届けないと。─彼らが満足しない。


私は彼らから知識や動かし方を借りている。
私は彼女から感情と色を借りている。


私に残るものは何もない。
私には何にもない。

どうせここでしか成り立たない存在であり。
そしてまた、やることを成し遂げられなかったものであり。

心底の願いには気がついていないし、心底にある気持ちは、晒してはいけないと率している。



終末兵器の役割は、ただ向かって行って星を撃ち落とすだけ。
そのための頭と、爆発だけが体に眠っている。


それだけの存在。

それだけのものに文句を言われてしまった。


何をどうしろと言うのだろう。

計算に間違いを起こした機械に全てを乗せて。

ああ、けれどそれだけ、願いをのせられていたことも真実であり。

おれは。

それがわかった俺は。


俺は。




エリンジウム、何故こんなものを得ている




───




◇ ◇ ◇



彼女の記憶がのぞき見えてしまった時。


彼女が、恐れられながらも愛されており。

彼女もまたそれらを愛していて。


酷く幸福であったことが見えてしまっていた。





兵器としてあるまじき同型の姿を見て。

怨嗟の声に怒りを抱くなんて、バカなことを思い。


ただ自分が成し遂げられなかったことの後悔の影に囚われて。



何もかもを忘れながらも、祝福を受けていることが、羨ましく思えてしまったのだ。




湿っぽくて、女々しくて。こんなんじゃ火をつけても消えてしまいそう。
ああでも、そう願ったっていいじゃないか。

滅びの兵器なんて、誰にも祝福されるべきではないから。
誰にも願いを知られるはずもないから。

きっと、こんな環境だったから、夢見てしまった絵空事。

それすらも、爆風に吹っ飛ばされて、消えてしまうんだから!



◇ ◇ ◇



──吹き飛ばされてしまうそれだとしても。

明日がない自分だとしても。


この島の生活は楽しかったから。


みんなで様々な素材を集めたことも。

島がどんどんと発展していくことも。

嵐の日に、外に出ている人を心配することも。

…海岸で赤子の君を拾い上げたことも。
終末兵器である自分が、そんなものを抱き抱えて、懐かれるなんて思ってなかったのだ。
そんなものを拾い上げていい自分ではなく、ものでもない。
生まれたての命を、終わらせるものが抱きしめているなんて、そんなこと。

だからお別れをするのであって。


…島の皆の顔も。話したことも。
沈み込んだ空気も。馬鹿な空気も。
立ち上がった花火も。打ち上げられていた花火も。
誰かが、重ね合わせながら、作られた兵器を大切に思っていた、そんな人がいたことも。


解ける直前まで待っている。
もらったものを抱きしめて。

似合わない王冠も、今だけは冠るのを許されそうな気がしているのだ。


──大義である!








けれど、終末兵器ができることはただ一つであり。

終末の訪れを、ねがうことだけであった。




それが、無慈悲な滅びであったり。
残酷な運命のようなものであったり。


そう言うものでないことを願っている。





─よき終末を!