Eno.578 和唐内 白音

その後のはなし

最初にあの島に流されたときはどうしたものかと思った。
記憶も荷物も何もなし。
唯一残されていたのは恐らく流された衝撃で液晶がバキバキになったスマートフォンと、布教されてそのまま放置していたスターターデッキと、人を選びそうなぬいぐるみ。
無人島には役に立たなさそうなものばかり。

木を切ったり、水を蒸留したり、遺体や食べたことないものを食べたり。
大変だったけど、なんだかんだで皆優しかったから、嬉しかったな。
最終的に島の真相も見つけて、皆でパーティーして、真相に乗り込んで脱出して……。
……やっぱり字面的におかしく見えるけど、現実に起こったことなんだよなぁ、これ。


無人島生活、大変だったけど、とっても楽しかった。
みんな、ありがとう。またあおうね!

その前に横浜中華街でパーティーがあるけど……!










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後日。
記憶喪失により帰る家を見失っていたが、元の学生証を頼りに家に辿り着くことができた。
お父さんもお母さんも、遠くで働いている姉も心配していたらしい。


彼女は、何も知らない。
自身の正体が本当は『和唐内 白音』の姿に成りすました別の誰かということを。
そして、成りすました偽物がいるということは、本物もいることになる。
本物がいるとしたら、きっと本物と出会うことだろう。
家の中や学校の中、或いはまた別の場所で。

しかし、和唐内 白音と同じ姿をした誰かと出会うことはなかった。
偶然すれ違っているだけなのか。
それとも、帰ってきたと思っていた世界は、実はよく似た別の世界だったのか。
そして、その世界に本来の『和唐内 白音』は存在していないのか。

それは、誰にもわからない。