それからのこと
共にシュリの世界へと向かい、聞かされた役目を果たして全てが終わった暫く後。
働きに対して何か望むものはあるか、と問われて、約束を守ってくれ、と求めた。
本来、忠義に対して見返りを求めることなどない。勝手に捧げるだけだ。
けれどその時は、命の賭けどころをくれと、再度望んだ。
この主の性格は分かっている。
宗燕に命を使わせることは出来ないのだろうし、そうであるなら約束を果たせない以上、今後も自分を傍に置いておくしかないだろう。
だから役目が終わり、全てが片付いた今でも、放流されずにいる。
時折、戯れの様に「まだ某の命の賭けどころは見つからぬか?」と訊ねてみるが、「雨水でも飲むか?」と返されるだけ。
本当に、つれない主だ。
機士になるかの提案は、主の傍にいる為なら、と一も二も無く受けた。
ただ、自身の剣術はあまり足しにはならないようで、それならば、と内務も学んでいるのが今だ。
政治・経済・物流・外交。
この世界の様々な分野を学び、シュリの補佐が出来るように。
対等に意見を交わせるようになれば、約束を差し置いても重用される筈だ。
手放されないような人材にならなければ。
学ぶ際に必要な言語についても結局、困りはしなかった。
SAに翻訳機能があるのもあるが、宗燕自身の能力としても、この世界の言葉が分かったからである。
血筋からかどうかは分からないが、やはり、界渡りに適正があったという事だろう。
ただ、SAの機能で分かっているという事にした方が都合が良さそうな為、主以外には知らせていない。
***
紙に書いていた文字が引っ掛かり、筆記具を見つめる。
船の上で図書館司書の少女から借りていた物だ。そろそろ、返さねばならない頃合いだろうか。
あの島での事を思い出す。
自分は何になるべきか、誰の役に立つのか。必要とされるには。
……そう言ったことに思い悩んでいた者が多かったように思う。宗燕自身を含めて。
結局のところ、それらは自分自身ががむしゃらに動いて獲得しなければならない物で。
自分がどう生きて行くかの選択を重ねていって。
そして今の、自分自身を作り上げていくのだと思う。
「……返せるかどうか、試してみるか」
どうすれば繋がるのか、という方法は、分かっていないけれど。
もし方法が分かったら、普段は取っていない休みを少しばかり申し出てみようか。
主も共に行けないか。忙しいから無理だろうか。
他に会える者もいると良いのだけれど。
手慰みで作った琥珀色の飴を口に含む。甘味が体に染みた。
和服姿のSAが淹れてくれたお茶を飲み、一息つく。
昼からは少し外に出て、今は学校に行っている主にも土産を買ってくるとしよう。
燕は渡りの鳥。海を越えて、世界を渡る。
けれど、帰る場所は、ここに在るから。
望んだものは、主の側の、自分の居場所。
そこでなら、息を吸って、生きていける。
***
*世界観についてはEno.635シュリ様に相談済み*
働きに対して何か望むものはあるか、と問われて、約束を守ってくれ、と求めた。
本来、忠義に対して見返りを求めることなどない。勝手に捧げるだけだ。
けれどその時は、命の賭けどころをくれと、再度望んだ。
この主の性格は分かっている。
宗燕に命を使わせることは出来ないのだろうし、そうであるなら約束を果たせない以上、今後も自分を傍に置いておくしかないだろう。
だから役目が終わり、全てが片付いた今でも、放流されずにいる。
時折、戯れの様に「まだ某の命の賭けどころは見つからぬか?」と訊ねてみるが、「雨水でも飲むか?」と返されるだけ。
本当に、つれない主だ。
機士になるかの提案は、主の傍にいる為なら、と一も二も無く受けた。
ただ、自身の剣術はあまり足しにはならないようで、それならば、と内務も学んでいるのが今だ。
政治・経済・物流・外交。
この世界の様々な分野を学び、シュリの補佐が出来るように。
対等に意見を交わせるようになれば、約束を差し置いても重用される筈だ。
手放されないような人材にならなければ。
学ぶ際に必要な言語についても結局、困りはしなかった。
SAに翻訳機能があるのもあるが、宗燕自身の能力としても、この世界の言葉が分かったからである。
血筋からかどうかは分からないが、やはり、界渡りに適正があったという事だろう。
ただ、SAの機能で分かっているという事にした方が都合が良さそうな為、主以外には知らせていない。
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紙に書いていた文字が引っ掛かり、筆記具を見つめる。
船の上で図書館司書の少女から借りていた物だ。そろそろ、返さねばならない頃合いだろうか。
あの島での事を思い出す。
自分は何になるべきか、誰の役に立つのか。必要とされるには。
……そう言ったことに思い悩んでいた者が多かったように思う。宗燕自身を含めて。
結局のところ、それらは自分自身ががむしゃらに動いて獲得しなければならない物で。
自分がどう生きて行くかの選択を重ねていって。
そして今の、自分自身を作り上げていくのだと思う。
「……返せるかどうか、試してみるか」
どうすれば繋がるのか、という方法は、分かっていないけれど。
もし方法が分かったら、普段は取っていない休みを少しばかり申し出てみようか。
主も共に行けないか。忙しいから無理だろうか。
他に会える者もいると良いのだけれど。
手慰みで作った琥珀色の飴を口に含む。甘味が体に染みた。
和服姿のSAが淹れてくれたお茶を飲み、一息つく。
昼からは少し外に出て、今は学校に行っている主にも土産を買ってくるとしよう。
燕は渡りの鳥。海を越えて、世界を渡る。
けれど、帰る場所は、ここに在るから。
望んだものは、主の側の、自分の居場所。
そこでなら、息を吸って、生きていける。
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*世界観についてはEno.635シュリ様に相談済み*