RECORD
Eno.58 ミオリッツァの記録
幸せを希う詩
その世界の創造主は彼を「小さき者」と呼び、しばらくしてから大地に住む生命を見せ、そこに共に住むように言った。
「小さき者」は喜び、さまざまな経験と感情を学びながら生命と共に過ごした。
太陽と月のような双眸に雲や白波のような白髪の「小さき者」は、白髪の君と慕われた。
だが、しばらくして「小さき者」は己が生命より逸脱した存在であると思い知った。
時間は悉くの生命を殺すが、「小さき者」は不変であり不滅であった。
「小さき者」は力を奮い救いの手を伸ばしたが、常に零れ落ちる者が出た。
誰かのためにわざと身を投げる者や、信仰故に御手の煩いを懸念する者、あるいは、そう望む者。
両手いっぱいに自分を「神」と讃える生命を抱え込み、救い続けた「小さき者」は、知った。
指からその零れ落ちる煌めく者たちこそが、真に救うべき者たちだったのだ。
しかし、生命は増え続けた。
救えば救うほどに救えぬ者が増えていった。
救えば救うほどに讃える声が増えていった。
「小さき者」はひたすらに被造する創造主に問うた。
『なぜわたしを生命として創らなかったのか、終わりを持たせてくれなかったのか、そうするべきではなかったか』
創造主は槌を振るいながら言った。
『お前を変える必要性を感じない、お前に終わりを持たせるなど考えたこともない、創ることがすべてである』
と。
故に「小さき者」はもはや分かり合えぬとして、旅支度を整え、大地に祝福あれと希った。
そして我が身と心を光の欠片に変えて、「小さき者」はどんどん萎み小さくなっていった。それに比例して暗雲は消え、疫病は去り、大地に奇跡が振り撒かれた。
救いの詩が空気を震わせ、光の欠片が世界に散りばめられ、杖と道がもたらされた。哀しみは喜びへ昇華され、悪しき道の者たちにも贖罪の道が与えられた。
奇跡に喜ぶ生命たちが「小さき者」を探しても、もはやその姿はどこにも見えず、またそれきり見ることもなかった。
白髪の君―――、かの「小さき者」は旅立ったのだ。
「小さき者」は喜び、さまざまな経験と感情を学びながら生命と共に過ごした。
太陽と月のような双眸に雲や白波のような白髪の「小さき者」は、白髪の君と慕われた。
だが、しばらくして「小さき者」は己が生命より逸脱した存在であると思い知った。
時間は悉くの生命を殺すが、「小さき者」は不変であり不滅であった。
「小さき者」は力を奮い救いの手を伸ばしたが、常に零れ落ちる者が出た。
誰かのためにわざと身を投げる者や、信仰故に御手の煩いを懸念する者、あるいは、そう望む者。
両手いっぱいに自分を「神」と讃える生命を抱え込み、救い続けた「小さき者」は、知った。
指からその零れ落ちる煌めく者たちこそが、真に救うべき者たちだったのだ。
しかし、生命は増え続けた。
救えば救うほどに救えぬ者が増えていった。
救えば救うほどに讃える声が増えていった。
「小さき者」はひたすらに被造する創造主に問うた。
『なぜわたしを生命として創らなかったのか、終わりを持たせてくれなかったのか、そうするべきではなかったか』
創造主は槌を振るいながら言った。
『お前を変える必要性を感じない、お前に終わりを持たせるなど考えたこともない、創ることがすべてである』
と。
故に「小さき者」はもはや分かり合えぬとして、旅支度を整え、大地に祝福あれと希った。
そして我が身と心を光の欠片に変えて、「小さき者」はどんどん萎み小さくなっていった。それに比例して暗雲は消え、疫病は去り、大地に奇跡が振り撒かれた。
救いの詩が空気を震わせ、光の欠片が世界に散りばめられ、杖と道がもたらされた。哀しみは喜びへ昇華され、悪しき道の者たちにも贖罪の道が与えられた。
奇跡に喜ぶ生命たちが「小さき者」を探しても、もはやその姿はどこにも見えず、またそれきり見ることもなかった。
白髪の君―――、かの「小さき者」は旅立ったのだ。