RECORD

Eno.367 フィリア・バルナルスの記録

日記5

……電話をかけてみるが繋がらない。

ここに来て一週間が経った。ダチのレナータのことがそろそろ心配だ。
なんせ料理をしようものなら台所は爆発するし、白衣も平気で裏表反対に着用する。
ボタンは掛け違えるわ寝坊するわ部屋は片付けられねぇわ、マジで今生きてるかなあいつ。

とはいえ、俺に会わなくても生きてたし、院長もいるし、大丈夫だとは思う。
んだけどあの院長もくっそズボラなんだよな。働いてるとこ見たことねぇぞ。


「困ったな。賢いやつの手ぇ借りてぇんだけどな」




やばいレベルのドジだが、知識や冷静さ、論理力はそんじゃそこらの奴の比ではない。
しかも人の心がないお陰で感情論を持ち込まずに思考してくれる。おかげで情報の整理や相談にはうってつけだ。

手が借りれないのであれば仕方がない。
賢くはないが、狡い人間だ。多少は何とかなるだろう。
紙とペンを取り、書きなぐる。自分はダオドラでは珍しい、読み書きのできる人間だ。
教えてくれたあの人に感謝をしながら、自分なりに考察を始めた。





■創世七神とは、世界を創った始まりの七人の神のことである
これを書いた時点で心のレナータが「はあ?」って言った。
地球って星があって地殻変動があったりとか太陽とかの位置が絶妙で生き物が生まれ始めただとか、そういった話ではないらしい。

大地も海も生命も、神が作った、らしい。あいつの世界では。
そういうもの、としか言えないのでそういうものとする。

「どういうものだよ」



考えてもしょうがないので次。



■他の神が作った物の検品作業をしている
世界に出すとまずいものを作るバカタレがいるので、それを検品している。大分かみ砕いた言葉になっているので、もう一度確認してもいいかもしれない。
七色に光るチェーンソーは正直見たい。これ同時に行われた話題混じってんな。

なお神は多忙らしい。髪を切る間もなければ顔の痣を治す時間もないらしい。
何で倒れねぇんだあいつ。

「俺は社畜にはなりたくねぇな」



次。



■あらゆる対象を砂(というより塵、か、あるいは無)に変えられる力がある
消えてなくなった、が正しい気がする。それこそ森羅万象に通用する力らしい。
こちらで言うところのランク5の力らしいが。

直感で思った表現をするのであれば。
存在を否定する力。そこにあった万物の存在を消す。
本人はこの力が好きではなさそうだった。

「作る神がいるなら消す神だっているよな」



向けられるとは怖いな、と思うけど。
あれが人に向ける度胸は絶対ないという確信があるから次。



■異様に人の死に敏感
天寿を全うすることはいいらしい。俺が極力長生きするつもりの主旨を話せば納得した。刹那的快楽主義者には変わらないとは思うが、その刹那をできる限り長く全うしようとは心掛けている。

調子を崩したときの怯えた顔が焼き付いて離れない。
寿命死を否定し快楽のままに生きて死に急ぐ話で明らかに不機嫌になる。

理由を聞いても教えてくれなかった。
多分信頼度が足りない。





さて。
死に対しての嫌悪感を吐いてくれないなら、こっちから推測するまで。

「寿命死、あるいは天寿を全うすることには肯定的だ。
 不調の俺に対する反応を見る限り、病死とか……
 突然こと切れることに否定的なんだろうな」




心には、感情には必ず理由がある。
境遇、環境、性質、能力、関係……それらが連綿と繋がり、組みあがり、アイデンティティとなる。
好かれる振る舞いとは、人に合わせて演技を調整することでもある。
それを読み取り、好まれるように振る舞い、付け込む。



「それを恐れる理由がある」


「あいつは神が作ったものを世に出さないようにしている。
 あいつはあらゆる存在を消す力か、それに等しい力を持っている」


「―― 人間を消す力があるということは、
 人間を消す必要があるということ」




「何万と生きておいて、人の死が怖いのも」


「人が好きなくせに、人を自ら手にかけていたとすれば?」


「神が作り出すものに、人間も存在するのであれば?」










「…………」


「あ~~~~無理!! 無理!! これ以上無理!!
 うるせぇ~~~知らねぇ~~~クソがよあいつ自分のこと全く喋んねぇからこんなくっそ面倒くせぇことするハメんなっただろーがよマジで覚えとけよあいつはよぉおおおおおお!!!!」




破り捨てなかった俺を褒めてほしい。