RECORD

Eno.218 ---の記録

【熊の頁】嫌い

耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍び―――
その御声が流れ始めた時、僕は厨房で子供達にあげるための西瓜を切ろうとしていたのを覚えています。
居間に駆けていくとそこには
蝉の声、風鈴の音、夏草の匂い、ラジオのノイズ。
父親が帰って来ることを期待した子供達の囁き声。
畑の土にまみれて立ち尽くす女性達の溜息。
ただただ悔しさに涙を流す年配者達のすすり泣く声。

それからいくら経っても
待ち人は帰ってこなかった。

憎むことは嫌いです。
闘う事は嫌いです。
殺す事は嫌いです。

それでも僕は自分を呪ってまでこの道を選びました。
人を守る為に手段を選んではならない、と。
人を守る意味を疑えば、それが僕の最期です。