RECORD
Eno.378 カナリア・クリフォード・ディアの記録
令嬢、願い、望み、眠る
ベッドの上。
髪をほどいて部屋着に着替えて、腰掛けて。
渡された部屋鍵を見つめる。
それはただの部屋の鍵。
いつでも来て良い、と示されたもの。
中にいなくても入っても良い、と言われたが故につまり、待っていても良いという事で。
――部屋でひとり、誰かを待つ、というのは。
落ち着かなくなるというのが分かっているが故に、いなさそうな時は部屋の外で待っていようとは思うけれど。
寝具傍の小棚に鍵を置く。
貰ったクッキーといっしょについていた紅茶の缶を視界に入れて、夕刻、買った物をふと思い浮かべる。
カフェテラスで見た顔と、様子。
……少しばかり驚かせてしまったか、やはり迷惑だっただろうか、なんて考えはするけれど。
嬉しい、とも言っていたので多分大丈夫だろう、と言い聞かせた。
多分、あれなら、役立てはする筈だ。
これからずっと戦い続けるのかどうかは分からないけれど、もしそうであるならばその身の安全と、それから此処での活躍を願い。
これまでの彼自身の努力への称賛を。
良い友人になれたらな、と少しだけ思った。
志が高く、優しい人だから、友人だなんて自分には勿体ないけれど。
ぽす、と身体をシーツに沈める。
もうひとつ。
買った花束を思い浮かべた。
以前は三色のそれらで纏めたものをあげたけれど、今回は。
花ならば消耗品と似たようなもの、ならば。
ただ余り増やしすぎても良くないだろう、と思いつつもまだそれしか浮かばなかった。
これから知ることができたなら、まだもう少し、考えられるだろうかなんて。
息を吐いた。
断絶を望み、ひとりでいなくてはとずっと思い続けてきたものだし、友人の作り方なんてもっと知らなかった。
だがきっと、少しずつでも知っていかなくてはならないだろう。
人と関わっていくという事を。
なるべく、……なるべく、できる限り、拒絶をしないようにしながらの、それを。
――良いのだろうか、こんな自分が。
――できるだろうか、こんな自分が。
この考え方も、きっと、変えていかなくてはならなくて。
祖父を、従者を、安心させてあげられる自分にならないといけなくて。
勿体ない、だなんて言われない自分にならないといけなくて。
瞼を落とした。
彼から言われたように在れる、結果を。
手を取ってもらえるように在れる、結果を。
努めていこう。学んでいこう。
家を誇りに思うカナリアが胸を張るように、正しく己を誇り、そのように在れるように。
部屋の中。
小さな寝息と、それから。
妖精達の微かな笑い声が、残っていた。
髪をほどいて部屋着に着替えて、腰掛けて。
渡された部屋鍵を見つめる。
それはただの部屋の鍵。
いつでも来て良い、と示されたもの。
中にいなくても入っても良い、と言われたが故につまり、待っていても良いという事で。
――部屋でひとり、誰かを待つ、というのは。
落ち着かなくなるというのが分かっているが故に、いなさそうな時は部屋の外で待っていようとは思うけれど。
寝具傍の小棚に鍵を置く。
貰ったクッキーといっしょについていた紅茶の缶を視界に入れて、夕刻、買った物をふと思い浮かべる。
カフェテラスで見た顔と、様子。
……少しばかり驚かせてしまったか、やはり迷惑だっただろうか、なんて考えはするけれど。
嬉しい、とも言っていたので多分大丈夫だろう、と言い聞かせた。
多分、あれなら、役立てはする筈だ。
これからずっと戦い続けるのかどうかは分からないけれど、もしそうであるならばその身の安全と、それから此処での活躍を願い。
これまでの彼自身の努力への称賛を。
良い友人になれたらな、と少しだけ思った。
志が高く、優しい人だから、友人だなんて自分には勿体ないけれど。
ぽす、と身体をシーツに沈める。
もうひとつ。
買った花束を思い浮かべた。
以前は三色のそれらで纏めたものをあげたけれど、今回は。
花ならば消耗品と似たようなもの、ならば。
ただ余り増やしすぎても良くないだろう、と思いつつもまだそれしか浮かばなかった。
これから知ることができたなら、まだもう少し、考えられるだろうかなんて。
息を吐いた。
断絶を望み、ひとりでいなくてはとずっと思い続けてきたものだし、友人の作り方なんてもっと知らなかった。
だがきっと、少しずつでも知っていかなくてはならないだろう。
人と関わっていくという事を。
なるべく、……なるべく、できる限り、拒絶をしないようにしながらの、それを。
――良いのだろうか、こんな自分が。
――できるだろうか、こんな自分が。
この考え方も、きっと、変えていかなくてはならなくて。
祖父を、従者を、安心させてあげられる自分にならないといけなくて。
勿体ない、だなんて言われない自分にならないといけなくて。
瞼を落とした。
彼から言われたように在れる、結果を。
手を取ってもらえるように在れる、結果を。
努めていこう。学んでいこう。
家を誇りに思うカナリアが胸を張るように、正しく己を誇り、そのように在れるように。
部屋の中。
小さな寝息と、それから。
妖精達の微かな笑い声が、残っていた。