RECORD

Eno.50 Liber·O·Igreedの記録

 首を掻く。
 手袋に残る、キラキラした結晶片。

 まるで、これが僕の細胞だったんだって言ってるかの様。

 こんなに柔らかくて削れやすいんだったら、さっさと抉れてくれればいいのにな。
 そんな想いも裏腹に、赤紫の結晶は盛り返してもとに戻っていく。

 僕と共に生きているんだ、なんて皮肉っても笑えやしない。

「君とお話出来ればいいのにな」


 返事は返ってくる訳がない。石だから。

 魔導クローンが、度々二重人格になるという噂は聞いたことがある。
 曰く、一人はクローンの人格なのだが、もう一つは魔力石の人格なのだという。

 そんな事を期待しても、やっぱり石は石。
 配慮も優しさもない、意識を押し殺してでも主導権を握って来ようとするもの。

 会話が通じるなら、どうにかなりそうな気がする。
 会話が通じないから、どうにもならない。

 重い瞼を伏せて、溜息を吐いた。