RECORD
Eno.710 ナティルノイア・メイラースの記録
一度目は引き分けてしまったものの。
一手ごとにどう対処するか懇切丁寧に教えてくれたおかげで、どうにかマクシムに合格をもらえた。
まだまだ先は長いが、焦っても仕方ないことだろう。
彼は手放しで褒めてくれたが、次にどうすべきかあそこまで噛み砕いて教えられて、わからなかったらそのほうが不思議なくらいだ。
たぶん次からはあんなに簡単にはいかないだろうな。
そんなことを考えながら、アリーナ……闘技場のほど近くにある酒場に赴いてみると、夜も遅いのにまだ何人かひとがいた。
座卓の数は多く、食事時にはここが全部埋まると考えると、本当にここの賑わいは大したものだ。
慣れない椅子(尻尾用のくぼみがない!)に苦労しながら席につくと、
初顔だからか少しばかり物珍しそうな目を向けられる。
顔見知り同士楽しく話していた客のうち一人が、急にばあ様に外へと追いやられてしまったのには驚いたが、
直後に私も同じ目にあったのには、もはや尻尾を引っこ抜かれた気分になった。
さっき牛の乳を頼んだばかりなのに!
さておき、どうやらここにいる面々は親切者が多いようだ。
新顔の私に対しても、あれこれ親切に教えてくれる。
飲み物を頼めばこうならない……と事前に教わっていたので、何を頼むか迷ったが、ぶどうを搾った汁を注文してどうにかこうにか戻ってこれた。
たまたま客足が少なかったのもよかったのかもしれない。
知り合いばかりなら、もっと知り合い同士で話が弾んでいてもおかしくなかろうし。
席に戻って早々、桃色の髪をした大男が、私の取り分だと飲み物を注文してくれたのに少し面食らった。
他の面子もあれこれと話しかけてくれたし、なんだか色々と恵まれていたのかもしれない。
困るようならまた奢ってやる、とまで言われてしまったし。
……もしかして、私は子供扱いされていたんだろうか?
…………、
まあいいか。貰えるものは有難く貰っておくべき。
あそこにいた者たちが、偶然その場に居合わせた存在として、気安く接してくれたのは間違いない話だ。
定期的に掃除の時間が挟まるらしく、それまでもう間もない……ということまで教えてもらったのだが。
あれこれ話しかけられれば返事をするのが礼というもので、結局どんどん飲み物を追加する羽目になってしまった。
場所を借りている以上、対価を求められるのはまあ道理だものな……いたしかたなし。
しかし……おなかがたぽたぽだ……
飲み物でいい、とくだんの大男は言っていたからその通りにしたつもりだったが。
寮まで戻ってきたものの、すぐには寝転ばないほうがいいかもしれない……
ううむ。
とりあえず……次からは、人の言うことを牙も立てぬまま丸呑みにせずに、ちゃんと自分の頭で考えて、食べ物も挟む。
食べ物も、挟む。
……以上、今日の反省、終わり。
契約初日、酒場という場所
一度目は引き分けてしまったものの。
一手ごとにどう対処するか懇切丁寧に教えてくれたおかげで、どうにかマクシムに合格をもらえた。
まだまだ先は長いが、焦っても仕方ないことだろう。
彼は手放しで褒めてくれたが、次にどうすべきかあそこまで噛み砕いて教えられて、わからなかったらそのほうが不思議なくらいだ。
たぶん次からはあんなに簡単にはいかないだろうな。
そんなことを考えながら、アリーナ……闘技場のほど近くにある酒場に赴いてみると、夜も遅いのにまだ何人かひとがいた。
座卓の数は多く、食事時にはここが全部埋まると考えると、本当にここの賑わいは大したものだ。
慣れない椅子(尻尾用のくぼみがない!)に苦労しながら席につくと、
初顔だからか少しばかり物珍しそうな目を向けられる。
顔見知り同士楽しく話していた客のうち一人が、急にばあ様に外へと追いやられてしまったのには驚いたが、
直後に私も同じ目にあったのには、もはや尻尾を引っこ抜かれた気分になった。
さっき牛の乳を頼んだばかりなのに!
さておき、どうやらここにいる面々は親切者が多いようだ。
新顔の私に対しても、あれこれ親切に教えてくれる。
飲み物を頼めばこうならない……と事前に教わっていたので、何を頼むか迷ったが、ぶどうを搾った汁を注文してどうにかこうにか戻ってこれた。
たまたま客足が少なかったのもよかったのかもしれない。
知り合いばかりなら、もっと知り合い同士で話が弾んでいてもおかしくなかろうし。
席に戻って早々、桃色の髪をした大男が、私の取り分だと飲み物を注文してくれたのに少し面食らった。
他の面子もあれこれと話しかけてくれたし、なんだか色々と恵まれていたのかもしれない。
困るようならまた奢ってやる、とまで言われてしまったし。
……もしかして、私は子供扱いされていたんだろうか?
…………、
まあいいか。貰えるものは有難く貰っておくべき。
あそこにいた者たちが、偶然その場に居合わせた存在として、気安く接してくれたのは間違いない話だ。
定期的に掃除の時間が挟まるらしく、それまでもう間もない……ということまで教えてもらったのだが。
あれこれ話しかけられれば返事をするのが礼というもので、結局どんどん飲み物を追加する羽目になってしまった。
場所を借りている以上、対価を求められるのはまあ道理だものな……いたしかたなし。
しかし……おなかがたぽたぽだ……
飲み物でいい、とくだんの大男は言っていたからその通りにしたつもりだったが。
寮まで戻ってきたものの、すぐには寝転ばないほうがいいかもしれない……
ううむ。
とりあえず……次からは、人の言うことを牙も立てぬまま丸呑みにせずに、ちゃんと自分の頭で考えて、食べ物も挟む。
食べ物も、挟む。
……以上、今日の反省、終わり。