RECORD

Eno.18 マネス・ミダスの記録

不死者としての資格


「……まさか、マネスの子から、
 諫言を受けることになるとはな」

「それだけの事を、しているからですよ。
 我が神、ゴルサン」

謁見の間――八色の大地と称される世界にて、
最も繁栄していると謳われる都市国家ゴウルドール。
その大神殿にて、一人の青年と神が対峙していた。
黄金に輝く衣を身に纏い、こちらを見下ろすは、威厳ある老人。
金にして、朝の男神ゴルサンは頷いた。

「マネスの行いが、か?」

「どう考えても、度が過ぎています」

「そうだな、そうかもしれん」

神に対峙している者――金のマネス・ミダスの子である、
ノヌムルアが、神であるゴルサンへ向ける視線が険しくなる。
ゆえに、吐き出す言葉にも自然と棘が混じりだす。

「そうだな、ではありません。
 知っているはずでしょう?
 アレが他の世界にも、手を伸ばしている事も。
 そこで――」

「――他の世界の者すら、この世界に連れ帰り、
 保管しようとしている、か」

知っていながら、何故、という目を容赦なくノヌムルアが向けた。
それを、意に介さず、金の神は、言葉を紡ぐ。

「ノヌムルア、お前にはお前の正義、そして考え方があるだろう」

「まさか、貴方は」

「そうだ。 お前の父親にも、考えがある」

正気か、という目で睨みつけられるが、神はどうもしなかった。
権能を与えているのも、その為であり――神たる己は、それを良しとしている。
あの強欲な怪物にして人間は、為すべきことのためにそうしている。
であれば、何も言うべきことはなく。
あれもまた、己が選んだにふさわしい不死者であるという考えを、
変える気は一切ない。

「アレが欲望のままに生き、欲望のままに愛し、
 欲望のままに己の目的を第一とて動く。
 それを、我は認めている」

「……アンタ」

「言いたいことはそれだけか。
 であれば、去るがいい。
 謁見を待つものは、他にもいる」

お前だから、許しているのだ。
そう告げる。
ぎりっと、歯ぎしりをしながら、ノヌムルアは踵を返して、
立ち去っていく。
荒々しい足音を、かつんかつんと鳴らしていきながら。

「お前もまた、我は気に入っているがな」

その言葉が、聞こえるわけがないのを知りながら、言う。
この世界は、停止している。
変えられるものは、何かを為そうとするものである。

その意味では、やはりお前達は似た者親子であると、言うことはなかった。