RECORD

Eno.566 マリナ・ザ・ストレンジの記録

● 《潮騒の》マリナ・ザ・ストレンジ - 5


ここはサルガッソ海に浮かぶ名前もない島で、
私は、今どき時代遅れの帆船でこの島にやってきた。
案内人は、顔も名前も知らない匿名の情報通。

インターネットは都合のいい相手を探すのにはぴったりだから、
匿名希望むめいの私にとっては、なんと情けないことに――
いまや最も色濃く他人と繋がるためのライフラインに他ならない。

インターネット、最高!

と、思ったのも束の間。
この名もなき島にはインターネットのイの字もないし、
事実上、世界と切り離された場所に連絡手段もないのに
閉じ込められてしまったから、なんとか脱出を試みているという訳。

週に1回は来るはずの、隣の賑やかなセント・ジョージ島と孤島を繋ぐ帆船は、
どういう都合だかやってくることはない。

自給自足でできているらしいこの島は、
幸いなことにポルトガル語が公用語らしく言葉は通じる。
それと同時に、他所者が珍しいのかお客さまへのもてなしも悪くない。

だから、私が現状を危ぶむまでに2週間もの時間が掛かったことは
この島の環境的・言語的要因によるものであると断言できる。

おまけに、よりわかりやすくするならば、この名もなき島は
インターネットと人生に疲れた現代人にはぴったりで、
デジタルデトックスとバカンスには最適だったということ。

だから、私が油断していたとか。
平和ボケしていたとか、そういうわけでは断じてない。