RECORD
Eno.367 フィリア・バルナルスの記録
日記10
追われる夢を見るときは、凡そ精神的に参っているときだ。
以前にも何度か見たことはある。レナータに相談したとき、こう教えてくれた。
「精神と本能が混ざって見る夢ですね。
基本的にR1であれば寝ている間まで本能に毒されることはまずありません。
が、精神的な乱れが起きる、あるいは野性の主張が激しくなるとそのような夢を見続けることがあります」
「共鳴型の方が見やすいですが、これはどなたでも見られる現象です。
ですから別に珍しいものでも何もありません。
精神安定剤と野性安定剤を出しておきますね」
「特にウサギって被食者でしたから。
性格も臆病で逃げることに特化していた。
だからこういった夢を見る。あなたの落ち込む原因と本能的な恐怖が混ざった夢を見るのです」
「え? 原因の追究? しませんよ。してほしいのですか?
ファンサービスをやめれば? という身もふたもない答えしか出せませんが……」
「私ができることは、あなたが満足に戦えるように医療や薬学で支えることです。
私も見てみたいですからお付き合いはしますよ。野性に頼らずとも高みに君臨できるのだと証明される様を、私も見てみたいですから」
ウサギは家具の場所が変わっただけでもストレスを感じる生き物だという。
表情が読みづらく、鳴くこともないため不調やストレスの原因も分かりづらい。
更に彼らは自身の不調を隠し、飼い主も気づけずにいたなんて事例も多い。
急に環境が変わった。異世界とは知らずにここへ来た。
野性を持つ自身が『当たり前』ではなく、『珍しい人間』だった。誰一人として他に野性を持つ人間がいなかった。
話せば常識があまりにも違う。
動物は突然変異をしていない。単語一つの意味すら違う。
武器を使って戦う、そもそも武器という文化に馴染みがある。
神という単語は意味こそ違ってくるが、基本的には存在している。
いくつか共通認識がある中で、自分はかなり共通認識から逸れた位置にいる。
自分がおかしいのだ。
自分が特殊な世界の出身なんだ。
自分が他者に合わせなくてはいけないのだ。
自分は今独りだ。
力を貸してくれる者もいない。
全てを1人でどうにかするしかない。
そんな中で、自分の世界の話を親身に聞いてくれた人がいた。
こちらの世界の理を知って、寄り添ってくれる人がいた。
理解に努めてくれて、気にかけてくれた。
そうしてその人のところへよく向かうようになった。
常套手段で好きにさせて、気を引いて。親しい仲柄だと思い込ませて。
そうすることで、自分の身を守ろうとした。
自身が潰れないように、この縁だけは大切にしようと思った。
嫌われないためにすり寄った。嫌われずに居れば、縁が切れることはないから。
ウサギは、そうすることでしか『助け』を求められなかったから。


その真実の何割を。
このウサギは理解しているのだろうか。
昨日の醜態を思い返せば、何だか妙に気恥しくなって、ざわざわして落ち着かない。
息苦しくなる感覚があって、変な浮遊感も覚える。
嫌悪感はなかった。
けれど、その感覚の後ろから。
『弱肉強食』を掲げ、警告を放つ私の声がある。
以前にも何度か見たことはある。レナータに相談したとき、こう教えてくれた。
「精神と本能が混ざって見る夢ですね。
基本的にR1であれば寝ている間まで本能に毒されることはまずありません。
が、精神的な乱れが起きる、あるいは野性の主張が激しくなるとそのような夢を見続けることがあります」
「共鳴型の方が見やすいですが、これはどなたでも見られる現象です。
ですから別に珍しいものでも何もありません。
精神安定剤と野性安定剤を出しておきますね」
「特にウサギって被食者でしたから。
性格も臆病で逃げることに特化していた。
だからこういった夢を見る。あなたの落ち込む原因と本能的な恐怖が混ざった夢を見るのです」
「え? 原因の追究? しませんよ。してほしいのですか?
ファンサービスをやめれば? という身もふたもない答えしか出せませんが……」
「私ができることは、あなたが満足に戦えるように医療や薬学で支えることです。
私も見てみたいですからお付き合いはしますよ。野性に頼らずとも高みに君臨できるのだと証明される様を、私も見てみたいですから」
ウサギは家具の場所が変わっただけでもストレスを感じる生き物だという。
表情が読みづらく、鳴くこともないため不調やストレスの原因も分かりづらい。
更に彼らは自身の不調を隠し、飼い主も気づけずにいたなんて事例も多い。
急に環境が変わった。異世界とは知らずにここへ来た。
野性を持つ自身が『当たり前』ではなく、『珍しい人間』だった。誰一人として他に野性を持つ人間がいなかった。
話せば常識があまりにも違う。
動物は突然変異をしていない。単語一つの意味すら違う。
武器を使って戦う、そもそも武器という文化に馴染みがある。
神という単語は意味こそ違ってくるが、基本的には存在している。
いくつか共通認識がある中で、自分はかなり共通認識から逸れた位置にいる。
自分がおかしいのだ。
自分が特殊な世界の出身なんだ。
自分が他者に合わせなくてはいけないのだ。
自分は今独りだ。
力を貸してくれる者もいない。
全てを1人でどうにかするしかない。
そんな中で、自分の世界の話を親身に聞いてくれた人がいた。
こちらの世界の理を知って、寄り添ってくれる人がいた。
理解に努めてくれて、気にかけてくれた。
そうしてその人のところへよく向かうようになった。
常套手段で好きにさせて、気を引いて。親しい仲柄だと思い込ませて。
そうすることで、自分の身を守ろうとした。
自身が潰れないように、この縁だけは大切にしようと思った。
嫌われないためにすり寄った。嫌われずに居れば、縁が切れることはないから。
ウサギは、そうすることでしか『助け』を求められなかったから。

「……まさか夢見が悪くなるほどに調子悪いとは思わなかったんだよな」

「次の日心配になって部屋に来るくらいっだったって、
どんだけ俺参ってたんだ」
その真実の何割を。
このウサギは理解しているのだろうか。
昨日の醜態を思い返せば、何だか妙に気恥しくなって、ざわざわして落ち着かない。
息苦しくなる感覚があって、変な浮遊感も覚える。
嫌悪感はなかった。
けれど、その感覚の後ろから。
『弱肉強食』を掲げ、警告を放つ私の声がある。