RECORD

Eno.566 マリナ・ザ・ストレンジの記録

● 《潮騒の》マリナ・ザ・ストレンジ - 6


淡々と、ここにある単純な事実だけを並べるのであれば
私はこのサルガッソ海――フロリダ半島の先端と、
プエルトリコとバミューダ諸島を繋いだ三角形の中。

いわば、バミューダトライアングルの中で2週間も消息を絶っていることになる。

外から私がどう観測されているかは定かではないけれど、
事実上、私は失踪、あるいは遭難したと言っていい。

バミューダトライアングルなんて、失踪や遭難に関する逸話は数知れず。
理論術理学者たちがこぞって避ける、シュレディンガー係数の低い場所。
だからバカンスにここを選んだのだけど、君子危うきに近寄らず。
案の定というか――お土地柄に冷たいマジレスを食らったのが、私。

とりわけ、私は隠すことが専門の呪術使いで、
不幸なことにいつも自分の居場所を自分の手で隠しているから、
この失踪や遭難を異常だと捉えられる人はきっと、地球上に誰一人いない。

つまり、世界で私というただ一人だけが異常に気付くことができて、
この異常な状況から脱却するには自分一人の力しか使えないということ。
その上で、インターネットという武器も封じられた私にとって、
この場において使える武器はたった一つ、自分の頭だけ。

この島の住人たちに問いただすと、私が来てからしばらく――
2週間は隣の島からやってくるはずの定期便が止まっているという話で、
今回みたいに余所者がバカンスに訪れるたびに船が止まる、という話を聞いた。

これが、彼女にとっての零次観測地点ポジション・ゼロ
彼女――マリナ・ザ・ストレンジにとってのアンカーポイント。
海に住まう、墓場の主にとってのはじまりの観測地点。

バミューダトライアングルと、凪いだ海。
どこにも行けない、おそろしくも透き通る粘りつく海。
幾度となく語られてきた、旅人を捕まえて逃さない船の墓場。

話は、再び彼女との邂逅にまで遡る。