RECORD

Eno.367 フィリア・バルナルスの記録

『天津風 Ⅶ』

タルタニア
「野性ランクが高かろうが低かろうが、野性を振るうための『器』が重要だ」


タルタニア
「野性さえ強ければいいと考える者がおるが、それでは大して強くはなれん。
 大量のエネルギーを用意しても、電球がしょぼければ強く光るどころか壊れてしまう。野性も同じだ」


タルタニア
「とにかく身体を鍛えろ。
 人間ができる動きで武器を作れ。そこに野性を添えるだけでいい」


タルタニア
「お前はウサギで、風属性。
 人間として戦う者にとって、機動力という才能に恵まれた。
 これを使いこなして立ち回れるようになれ」


フィリア
「―― はいっ!」




タルタニアは常にこの施設にいるわけではなく、出かけて留守にすることが多かった。
全く帰ってこないというわけではなく、大体は夜になれば帰ってきた。
そこからフィリアを始め、他の子供の戦闘指南を行った。
強くなることに貪欲になったうさぎは、言いつけ通りに身体を鍛えた。
身体を壊さない程度に身体を追い詰め、高みを目指した。


弱者には生きる権利すら与えられない。
幸せな家庭を甘受することも許されない。
強さが全て。だから、姉は捨てられなかった。P4 W-Rabbitという恵まれた才能を持って生まれた。
それだけではなく、大して努力せずとも暴力的な強さを持っていた。


ずるい。姉だけが恵まれている。
姉は私の野性が恵まれずに生まれたことを喜んだ。

―― 許せない。



「すごいなぁ、フィリアちゃん。あんなに頑張れるなんて」


「凄い姉がいたんだって。P4の野性を持った姉なんて、比べられて俺達は捨てられるしかないよなぁ」


「見返すんだってよ。俺……応援してる! フィリアならきっといつかやってのけるよ!」




そうして、いつの間にか臆病な自分も、しおらしい自分もどこかへ置いてけぼりにしてきてしまった。
強くなるためには、それは邪魔だったから。
少しでも強い自分になるために努力をして。


「フィリア~! 夕食の時間だよ~!」


フィリア
「あいよ、今行くぜ!」




そうして、フィリアという人間は随分と粗暴で口の悪い人間になっていた。
弱さを克服するために男勝りな性格を演じるようになり、荒んだ内面を隠すようによく笑うようになった。
内面を晒して同情を誘うような真似を彼女はしなかった。

そしていつしか、それが彼女にとっての『基盤』となるのだった。



ウサギ同士の喧嘩は激しく、縄張り争いも威烈だ。故に、闘争本能自体は強い。
しかし、ウサギは本来あらゆる獣に追われる立場であった。
故に警戒心が強く、臆病で怖がりな動物だ。

ウサギが戦いに向かないと言われる最もな理由はこれであった。
特に共鳴型は動物の本能と己の精神性を同化させる。
個人差や個体差こそあれど、臆病な動物の野性を持てば影響を受ける傾向にある。


―― だから、それを殺した。
弱ければ無価値だから。この世界で生きていくには強くなくてはいけなかったから。

嘘をついて、演じて、己の基盤にする。
そうすれば、いつかは強い自分が真実になる。

桃色のウサギを蝕む毒は、彼女を嘘つきに変えた。





―― フィリア・バルナルス
きゃるんきゃるんしたあざとい振る舞いが特徴の女性。
初対面から距離が近いことが多いが、その殆どが本心ではない。


だって。
『あたし』も『俺』も、どっちも嘘だもの。