RECORD

Eno.50 Liber·O·Igreedの記録

 しかし、苛立ちは睡眠に悪い。
 君の寝息は聞こえるのに、僕は胸の奥のモヤモヤが収まらなくて。
 結局起き上がって、備え付けの電子機器を操作しだした。

 声を掛けてきた企業の名前は全部覚えている。
 それを1個ずつ検索して、数を絞って。

 『住み込み』で『純人間も働ける場所』を探して。連絡を取り合って。

 最終的に決まったのが、田舎に隠れ住む民間軍事会社の『ウッドカット』だった。

 退店時間が迫り、『ウッドカット』の要項を纏めた紙をミカゼの顔面に叩き落とす。
 手に持つ必要のない電子スクリーンもある世の中だけど、金がないと言ってるミカゼが持ってるとは思えなかった。

 古典的な用紙で叩かれ飛び起きた君は、キョトンとした顔で紙を見る。

「就職先、欲しかったんだろ?
 仕事内容はアレだから、決めるかは好きにしな」



 会社名、業務を見て血の気が引いたかのようだ。
 当然だ。内容は人を殺す事も含んでいるのだ。魔導クローンならともかく、人間社会に生きて犯罪も正義も理解している純人間がする事ではない。

「行くんだったら僕も行く。そういう契約だから」



 裏稼業の企業だって、純人間を雇いたくはない。簡単に傷物にするわけにいかず、給料も発生する。ほとんど断られたのはそれだ。
 唯一、ウッドカットが純人間を欲しがったのは、恐らく田舎周辺の人間関係をどうにかしたかったのだろう。魔導クローンだけでは、疑いの目を向けられてしまうから。

 それでも純人間だけはいらない。だから、僕も入社する事を条件とした。
 元より、軍に入れられることを想定されている聴劣化だ。耳が聴こえない以外は、体格も力も頭脳も申し分ない。

「ま、僕としては何かに縛られるよりも、悠々自適に暮らしたいんだけどね」



 これは本音。研究施設で懲りた僕は、もうどこにも行きたくないと思ってたから。
 ミカゼは資料を読み終えて、ようやく声を出した。

「………少し、考えさせて欲しい」


「いいよ」



 そうしてその日は解散した。