RECORD

Eno.50 Liber·O·Igreedの記録

「木偶の坊」


「魔導クローンなのに劣化が使えないなんて」


「聴劣化? 知らないけど、視劣化と同じってこと?
 良いなー。だって劣化で死ぬことないじゃん」


「感覚器系統の劣化って贔屓されてるよな。福祉も充実してるんだって?」


「能無しのお前が、図体がデカいだけで僕らの劣化に勝てるわけないだろ」


「可哀想。生きてる意味あるの?」




 魔導クローンは魔力石を取り込み、劣化を使うために作られる。
 劣化が使えなければ、タダの邪魔な肉だ。

 外なんか出なければよかった。
 研究所に戻ろうとしても、警備員に跳ね返されるだけ。魔導クローンの溜り場に行っても、劣化が使えない僕は最下層。
 同じ魔導クローンなのに、それより下。

 だから僕は、基本的に一人でいた。
 飯と雑用と―――の時にだけ呼び出されて、愛想だけが上手くなっていった。

 手を振れば皆がにこやかに笑ってくれて誰も自分に振り返ってくれる事などなく
 話を聞けば、幸せな人間の営みが聞けて誰もが口を開けば不幸と罵声と汚さに満ちた話ばかり
 素晴らしい力だと、皆が自分を褒めてくれて能無し。木偶の坊。劣化の使えない魔導クローン

 有能な聴劣化の姿など、もうどこにもなかった。

 最初は抗ってた。
 劣化が使えなくても出来ることはあると。
 希望に満ちていた。

 その希望を、丁寧に、丁寧に切り落とされて。

 やがて、心の中でガラガラと何かが崩れた。
 音なんか聴こえないのに、響いた。

 そうやって、自分を受け入れたんだ。
 僕は、底辺の無能な魔導クローンですって。