RECORD

Eno.76 ミシェル・サハスラーラの記録

『愛』

自分には、なかったものだった。
いいや、きっと最初は、あったのだろう。
生まれた時、その瞬間までは。


「生まれて間もなく、俺の両親は殺された」


もちろん、それはリルリーリエの手によるもの。
未だに、理由は分かっていない。
リルリーリエが、何故俺を『神の器』として選んだのか。


「そうして、俺はリルリーリエの下で過ごした」


最初は家族として。
けれど、リルリーリエは長命種だ。
自然と追いつき、隣に並ぶほどになった時。


「リルリーリエは、俺に恋をしていると言った」


それがどんなものか、正直わからなかった。
けれど、彼女が言うなら、それは良いものなのだろうと。

それからは、恋人になってからは、酷いものだった。
今思えば、器の候補を増やそうとしていたんだろう。
俺は、ちっとも興味が沸かなかった、むしろ恐怖に満ちていたが。

それでも『恋愛というものが生きる全て』になっていた。
そうしなければ、生きていけないから。
愛されていなければ、……否。


「俺は、彼女の愛を拒絶したことがあった」


そう、あったのだ。
疑問に思ったことが。
彼女の言うそれが、この行為が、本当に愛なのか。


その日だった。
悪魔が、スプリルエラを襲ったのは。



「俺は器となり、呪いは、再びかけられた。彼女の計画通りに」



それから、暫くして。
彼が、ボロボロの俺に手を伸ばしてくれた時。
────ああ、これだけだと不親切だな。
これは、2回あったことだ。
『俺の世界』と、『フラウィウス』でのこと。

どちらも、俺にとっては、支えで、救いで、────命だった。


「それだけ愛があったと言うのに、俺は」


今の今まで、彼女の呪いが、解けずにいたのだ。

「でも」


俺には、まだわからない。
愛とは、何なのか。
今俺が抱えている感情が、どういう愛なのか。

そして、あいつが、俺にどうしてほしいかも。
わからない、ままでいる。


「なあ、教えてくれ」



ミハイル、お前の愛で、お前は、俺をどうしたい?