RECORD

Eno.378 カナリア・クリフォード・ディアの記録

令嬢、囁かれる

それはとある日の事だった。
たった一人の家族にも従者にも何も言わないまま、繋いだ妖精たちが語りかけてきた。

それは大層無邪気な妖精の話。
妖精の言葉に耳を傾けすぎる事は余り良くはなかったのだけれど。

曰く、戦う事が主なる舞台があるらしい。
曰く、それはこの地から遠く遠く離れた世界らしい。
曰く、己が力を貸している今ならば、どうにでもなるらしい。

曰く、――まぁ、要するに、楽しそうだと妖精は笑った。


令嬢は笑った。

いずれこのディア家は維持できないまま朽ちていく。
祖父ももうだいぶ歳を取った。
床に伏せる事も増えた。
従者は良く自分についてくれているけれど、祖父から言われた言葉を思い出せば、このままで良い筈がなかった。

何かひとつ、自分だけでも生きていけるだけの力を付けなければ。
それは何でも良い。何だって良い。
祖父の事も、従者の事も安心させてあげられて、そうして自分が、――――――――――――



「このカナリア・クリフォード・ディア。
 承知致しましたわ、妖精様がた」



「どうかその地に、わたくしを導いてくださる?」




何にもできない令嬢は、けれど気まぐれで無邪気な妖精の力を借りて、どうにか闘いに耐えうる力を得て。

――フラウィウスに、単独、足を踏み入れた。