RECORD

Eno.50 Liber·O·Igreedの記録

 一方は身体を汚されて。
 一方は最悪な事実を聞かされて。

 兄弟そろってベソベソ泣いてる。

「風呂沸かしたんでドーゾー。
 服は合いそうな奴を見繕っておいたんで……」



 流石に復讐の気も失せたのか、長男は僕の指示にも素直に従って風呂場に行ってくれた。

「はい。ミカゼは水」


「………………」



 顔も上げず、その水を受け取った。
 僕との距離を開けている感じはする。

 無理もない。ミカゼが苦手な物を、僕は強行してしまったのだから。

「モニタリング、点けっぱなしにしてる?
 何か指示あったら伝えてくるけど」


「……………聴劣化に何かあったから各個人で動け、と伝えてある。必要ない」



 本当に僕が呼んだ声だけで状況を察してくれていた様だ。恐れ入る。

「………………何で、五奈に手を出そうとした?」


「何でだと思う?」



 ようやく口に出せたものを、軽く返したものだから流石に睨まれた。

「悪いのは全部僕さ」



 もうじき死ぬやつに、悪い物を全部乗せてしまえ。
 生きる君が、少しでも気が楽になってくれればいい。

 君のせいになんか、する気はない。

「………五奈の事は、好きなのか?」


「んー……いや、君には理解が難しそうだから、ちゃんと言おうか。
 “いいえ”だよ」



 いつも通り軽薄な『愛してる』でも良かったのだが、此処で勘違いを招いても厄介だ。
 『目的』は達成したから、いくら嘘のメッキを剥がされても後戻りは出来やしない。

「………最悪だな、お前」


「その通りさ」



 暫く怪訝そうな顔で見上げ、ミカゼは溜息を吐いて帽子を深く被った。

「許せる気はないというのに」


「俺も最悪だ」


「五奈が子供を産まなくて、ホッとしてる自分が居る」



 木削子(コケシ)はミカゼにとって自虐だ。
 子消し(コケシ)だもの。

「けど、やっぱり後で一発―― いや、十発くらい殴らせろ


「ハイ……」



 そこで冗談を言える程、僕は自分のしたことの重さを分かってないわけではない。