RECORD

Eno.216 アヤト・キリシマの記録

暗影と黎明 4

―オマエ自身、だよ。霧島文人。

「ふざけるな……ふざけるなッ!
お前が、シャドウが俺であってたまるか!
人類の敵である、シャドウが……ッ!」


「いーや、ふざけてなんかねェよ……。
オマエが見ている俺様は、間違いなくオマエだ」


「っ……なんで……!?」


「まァ、そうだなァ……。
霧島文人、平行世界ってわかるか?」


「……平行世界?
この世界とは別の、交わらない世界……?」


「まァ、そんな感じだなァ。
特撮でもそーいうネタはあったもんな?流石にわからァな」


「……」



こいつは一体、何が言いたいんだ?
そう思いながら、次の言葉を待つ。

俺達・・、クリムゾンウルヴズは、デイブレイクを裏切ったボルドーを追うために海外へと向かった。
そしてその際、ボルドーからデイブレイクの真実を知った。そうだろ?」


「……ああ、デイブレイクが、
母さんのDNAを使って違法な実験をしていた話だろ……。
嫌な話を思い出させるな……それが何だって言うんだ……!」


「クク、悪ィ悪ィ。俺もこの話は嫌ェだからよ。わかるぜ。
だが、オマエもわかるだろ?母さんに好き放題した連中が、
許せないって気持ちがよ……」


「あいつらは……俺達の信念を踏みにじった。
人のためだか何だかって言いながら、人道に反する真似を正当化したんだ。
それも母さんのことをな……赦せるわけねェだろ?」


「だから俺は……シャドウと手を組んだ。
こんなくだらねェ組織を護るのも、世界を護るのも、バカバカしくなったからな。

そう、俺様は、シャドウと手を組んだオマエの可能性だ。


「俺の……可能性……!?」


「だからオマエの剣術も、ギフトも扱えるんだ。互角なのも納得いっただろ?
だがな……その上でシャドウの力を解放したらどうなると思う?」



その言葉と共に、黒いアヤトは禍々しい気迫を放ち、アヤトに向かって大剣を振り下ろす!

「なっ……!?ぐぁあああっ!!


「クク……クハハ……!
分かっただろ?人間の領分を出れないオマエに、俺様は倒せない!
今日はその時じゃねえ、見逃してやる。だが―」


「次に会ったときは、霧島文人平行世界の俺を喰らって、
俺が唯一の霧島文人になる……!


「な……んだと……!?」


「まァ、つっても?
お遊戯場モノマキアのルールじゃあ命までは取れねェしなァ?
やれるとしたらオマエの心をぽっきり折るまでなんだが。
……例えば、シアーナ・ラナスを目の前で処刑し続ける、とかなァ?ククク……!」


「なっ……!?
あ、あいつは関係ないだろ……!やめろ……!」


「……それが嫌なら今のうちに隠居してくれてもいいんだぜェ?そうすりゃ一番軽傷で済む。
何にせよ、デイブレイクにはもう関わるな。人類の希望なんて忘れろ。
後は俺様が、全部終わらせてやるからよ……!

ククク……クハハハ……クハハハハハハッ!!」



地に伏せたアヤトをそのままに、
邪悪に笑いながら、黒いアヤトは路地を去って行く。

「……くそっ……なんてこった……!」



一人残されたアヤトは、地面を殴る。

「……俺の剣が通じないどころじゃない……!
あいつは俺だ……!そして、俺でありながらあのシャドウの力を持つ……!
そんな奴に……どうすりゃ勝てるって言うんだ……!」


「俺はこのまま、尻尾をまいて逃げるしかないのか……!?
くそっ……畜生ッ……!!」



畜生ーーーーッッ!!

路地の奥で、青年の叫びがこだまする……。