RECORD
Eno.566 マリナ・ザ・ストレンジの記録
怪異の存在は、遡れば19世紀に初めて存在が確認されたという。
ヴィクトリア朝のイギリスにて広まり、その姿は霧に隠されたまま。
ヴィクトル・ユーゴーによって書かれた小説。
『海の労働者』の中で初めてその存在が描かれ、瞬く間に広まった。
人々は海になど出ない時代において、その怪異の存在はひどくセンセーショナルだったといえるだろう。
それは、船を海中へと引き摺り込んだ。
長くうねった触手を持ち、不快な粘液と共に自由自在に操る、海の怪異。
古くは北欧諸国に伝わっていた海の怪物、クラーケンと同じ意伝子を持つ。
あるいは、ギリシア神話に名を連ねる海の怪物、セイレーンと同じ意伝子を持つ。
遭遇したら最後、その船は海の藻屑となり、
人々は深く、昏い海の中に引き摺り込まれることとなる。
それを西洋圏に暮らす人々は、ほんのいっときだけ悪魔として扱った。
海が既知ではなかった頃に、未知が未知として扱われていた頃に。
時は経ち、ほんの世界の片隅でだけ、悪魔の存在が知れた時代。
言葉は死に、情報だけが残った現代において存在する怪異。
異なり、怪しきもの。
すでに消費され、消えゆく物語の残滓。
もっともらしい理由を並べられてそれらしく取り繕っただけの、無価値な情報。
悪魔の名は今や遠い。
マリナ・ザ・ストレンジ。
それが、怪異に与えられた新たな名前だ。
● 《潮騒の》マリナ・ザ・ストレンジ - 1
怪異の存在は、遡れば19世紀に初めて存在が確認されたという。
ヴィクトリア朝のイギリスにて広まり、その姿は霧に隠されたまま。
ヴィクトル・ユーゴーによって書かれた小説。
『海の労働者』の中で初めてその存在が描かれ、瞬く間に広まった。
人々は海になど出ない時代において、その怪異の存在はひどくセンセーショナルだったといえるだろう。
それは、船を海中へと引き摺り込んだ。
長くうねった触手を持ち、不快な粘液と共に自由自在に操る、海の怪異。
古くは北欧諸国に伝わっていた海の怪物、クラーケンと同じ意伝子を持つ。
あるいは、ギリシア神話に名を連ねる海の怪物、セイレーンと同じ意伝子を持つ。
遭遇したら最後、その船は海の藻屑となり、
人々は深く、昏い海の中に引き摺り込まれることとなる。
それを西洋圏に暮らす人々は、ほんのいっときだけ悪魔として扱った。
海が既知ではなかった頃に、未知が未知として扱われていた頃に。
時は経ち、ほんの世界の片隅でだけ、悪魔の存在が知れた時代。
言葉は死に、情報だけが残った現代において存在する怪異。
異なり、怪しきもの。
すでに消費され、消えゆく物語の残滓。
もっともらしい理由を並べられてそれらしく取り繕っただけの、無価値な情報。
悪魔の名は今や遠い。
マリナ・ザ・ストレンジ。
それが、怪異に与えられた新たな名前だ。