RECORD

Eno.321 ロトリアシア・メイラースの記録

雷雨

 
雨が降っている。

ひどい大雨だ。傘も雨具も、屋根だってもはや無意味だ。
風は強く雨を体に押し付けてくる。
バケツをひっくり返したような、とか、そういう次元でない大雨を。
滝? 滝だな。それくらいの雨。


その中に、俺は立っている。


もはや何も見えないほどだ。目を開くことも本当なら難しいだろうな。
それでも前が見えるのは、これが夢だからか。

時折空が光って、音がする。
多分雷なんだろう。雨の音のほうがうるさくて、わからないけど。


そのうち、雷が近くに落ちる。
正確には、落ちたらしい、といったところ。
詳しく判断するほどの視界はない。

何度も落ちる雷は、きっと近づいてきているのだろうが、
どこに落ちたって眩しいのは同じだから。


さて。
この調子なら、次の雷は、ついに俺までたどり着くけど。
どうだろうな。痛いのかな。
前の夢は、それを感じる前に終わった。

雷は、光とともに落ちてくるわけだけど。
それはつまり、速すぎて怖いとさえ思えないということ。
じゃあ、よっぽど──

ナットが俺の顔を狙って来るときのほうが、怖いな。


じゃあ雷って怖くないんじゃない?
あのときのナットだって、俺は倒した。首を落として。

なら、

雷の首だって、取れるんじゃないか?



無理か。首ないな。



あ? 今の光も雷か。どこに落ちた?
音、聞きそこなったかな。

あ、違う。俺に落ちたのか。
全く痛くなかったけど。

俺が電気の力か何かに目覚めたと仮定して。静電気だったとかいうオチじゃないとして、だ。
俺に電気が効かなくなったとしたら、こんなふうに雷も効かないのかな。

かっこいいじゃん。
じゃあ、せっかくだから、俺もこういう雷を落とせるくらいになりたいけど。
さすがに手から雷をっていうのもイメージがまぶしっ

前に飛ぶ雷とか全然うるさっ


……。
この雷、腹立つな。


          ──ちり、と火花の跳ねる音。

おい。もっかい落ちてこいよ。

          ──ばち、と電気の奔る音。

そしたらさ。

          ──ばぢ、と光の疾走る音。



俺が、殴り返してやるよ。



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おい。なんでいいとこで目が覚めるんだよ。
ビビってんのか雷。おい。ナメてんじゃねえぞ。

まあいい。気分は悪くない。明晰夢っていうか、意識のある夢だったから。
でもまあ、そりゃ雷の夢も見るか。
自分が雷の力を使えるらしくて、それが夢じゃない、っていうなら、
強く印象に残ったまま寝るのは俺以外でもそうだろ。
……ああ、だから前も雷の夢を見たのかな。
何かの影響でこの力を密かに得て、それが夢に出てた、みたいな。
……なんでだ。ちょっと違う気がする。


一応確認しとくか。
俺は昨日急に雷属性の人間みたいになって、
こうやって手からバリバリバリうわああ


…………。
こうやって、指を弾いたらばちっと電気が出るようになったはずだったんだけど、
なんか今は手からぐわーって溢れるみたいに電気が出るようになっていて、



……普通に怖い!