RECORD

Eno.378 カナリア・クリフォード・ディアの記録

令嬢、テラスでの出会いを考える

英雄と共に過ごす一室。
睡眠の支度をしながら、令嬢は自分の事ではない、もうひとつ気になる事を考える。

――あんな感覚を受けたのが初めてなものだから、とても驚いてしまったけれど、時間が経った今なら大分落ち着いていて。



鴉を伴っていた、名も知らない・・・・・老紳士。
出会った事のない人・・・・・・・・・で、それもあんな気のせいにもできそうな一瞬。
ただ確かに寒気は感じていたものだから。

此方を見ていたのだろうけれど、どうにもそんな視線を向けられる覚えがない。
鴉を見ていたのが気に食わなかったのだろうか、と過りはせども、穏やかに微笑んでいた様子を思えばこそそれもいまいち納得できない。



リボンを解いた髪を櫛で整える。
一度瞼を落とし、試案の間。
ゆっくりと目を開いた。



分からず、気になるならば、対話をしよう。
向き合い、対話をすることは大切なのだと自分は学んだはずだ。

どのような人物であるかも分からない内から妙な偏見を抱いてはいけない。
或いは本当に自分の気のせいだった可能性もある。
普通に、和やかに会話ができればそれはそれで良い。

あの老紳士とは一度会ったきり、次に会えるかは分からないがまたカフェテラスで出会えるだろうか。
次に見かけた時には。

声をかけてみようか、なんて。