RECORD

Eno.809 フレイムスカージの記録

学者の言葉

竜の呪い。
その話をするのなら、まずは魔法の話をせねばならないでしょう。

魔法使いの声は、声にあって声にあらず。
定められた言葉と旋律によって紡がれた音は、世界に働きかける呪言となります。
それと同じような力ある言葉を、人以外の生き物も持つのです。

竜の咆哮など、その最たるものでしょう。

かつての人は、その咆哮に神秘を見出しました。
竜は単なる生き物とは違うと、神に連なる存在だとすら考えたのです。
ですがそれは、我々の知識で説明のつくものです。

空を飛ぶのは鳥も同じ。天馬だっています。
炎を吐く生き物も、例がないわけではありません。
それらが合わさった結果、神性を感じるようになった、それだけのこと。

呪いの話をしましょう。

高熱を出した男が、子を成せなくなるという話を聞いた事はありますか?
ある種の病に罹った女が孕んだ子が、目を開かぬという話は?
子泣きの沼と名付けられた沼、そこで泳ぐと、将来魔物の子を産むことになるだとか、
そういった話は、私達の間では有名なのです。

子に効果を齎す呪いというのは、恐らくそういうことですよ。
竜の咆哮は、魔法的な力を持っている。
それが、直面した男の子種に、何らかの影響を与えたとしても、私は驚きません。

それにしても、貴方は奇特な方ですね。
こんな話を聞くために、わざわざ私のようなものを探し出すなんて。
武芸者は学者を嫌うものだと思っていましたが。

ええ、理由なぞ聞きませんよ。話す側も聞く側も、楽しい話ではないのでしょう?