RECORD

Eno.58 ミオリッツァの記録

道楽日記その2

 良い所に流れ着いて体を休めていると、悪い所の記憶を思い出す。
 人の営みは分からぬもので、上を見れば再現はなく、下を見れば死が転がっている。
 なんとままならぬ種族だろうか、と思ったこともあったが、今はそれすら懐かしい。

「嗚呼、夜風に撫でられながら腑に蒸留酒を流し込むことの、なんと至福な事か」



 儚き命が健気に何事を成そうとする在り様は、美しいものだ。
 一つの人生で成し遂げられぬことを、複数の人生が支えることもある。
 短い命の道行きを、精一杯に歩こうとする者たちもいる。
 その生き方をいったい誰が笑えようか。
 その精神をいったい何が貶せようか。
 光り輝く星に手を伸ばす幼年の者の手を、いったい誰が折れようか。

「どこへ行っても、儂は人間が好きということかもしれぬ」



 王道、正道、常道。
 善き道を歩き秩序と寛容を掲げる者は、幸せがあるべきだと思う。
 邪道、破道、外道。
 悪しき道を歩き畜生となり排斥する者は、罰があるべきだと思う。

 嗚呼、まったく。

 つまるところ、儂は欲深で我が儘なのだ。