RECORD

Eno.18 マネス・ミダスの記録

根源

「……セウラニ、何のつもりだ。
 本当にマネスを失う所だったのだぞ?」

黄金の衣を纏う老人が、そう問いかける。
言葉上、丁寧なだけで、言動そのものは怒りに満ちていた。
マネス・ミダスだけではない。
あれでは、同志足りえる相手にも、危険だと思われるだろう。
進めてきていた計画が、水の泡になりかねない所だった。

幸いにして、白髪の君によって、また黄金の獣を打倒した彼女自身の手によって、
マネスが正気に戻るまでの時間が稼げたからよかったものを、
あのままでは、下手をすれば闘技場での制限は掛ったうえで、
ほぼ本来の不死者が顕現するところだったのだ。

「怒るなよ、ゴルサンの爺。
 そもそも、俺はマネスについては、反対の立場だって事、忘れてないだろ?」

嘲るように、白髪の君と同じく、
白く艶やかな、最高級の絹をも思わせる長髪を揺らしながら、
女と見まがう肌と体の柔らかさと細さを持った少年が――。
――白の神、セウラニが老人を見つめ返した。

「結局、マネスはミオリッツァのおかげで無事だし、
 あいつはアレで正気に返ったんだ。
 強欲さは変わらねえだろうが、ひとまずはめでたしめでたしだろ?」

「そういう問題ではない」

「いいや、そういうもんさ。
 何より、アイツの強欲さを見たうえで、あの可哀想なシスターと、
 桃色髪が首を振ると思うか?」

鈴を鳴らしたような甲高い、透き通った聞きほれるような笑い声。
騎士たちが見つめては、蕩けたような表情を浮かべる中で、
黄金の神だけが、威厳ある双眸を顰めて、咎める様な視線をぶつける。

「最初から、そのつもりか」

「まさか。 人、一人が来たところで俺たちの世界は影響なんざ受けないさ。
 転移者たちも歓迎してるし、時代はゆっくりと変わりつつある。
 このまま、穏やかに進めばいい」

微笑みかけるその視線に、また白の騎士達が、息を吐く。

「……よく言えたものだ。
 貴様らが」

「あれは必要な事だ。
 余計な事は考えずに、たちと共に歩めばいい。
 それが分からない連中は、やがて余計な力を持つ」

だから、始末した。
そう言いたいのだろう。

「お前」

「忘れるなよ、ゴルサン」

「――俺たちが行うべきは、世界の管理だ」