RECORD
Eno.367 フィリア・バルナルスの記録
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―― 確かに自分はこう言った。
いつもの何でもない、他愛のない会話。
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そう、言ってくるから
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―― する度胸があるの? その気があるような言葉ですぐに赤くなるあなたが?
……揶揄いの言葉のつもりだった。あるいは、軽い挑発だったかもしれない。
自分から行く分は平気だったから、己の傷が視野に入っていなかった。
思い返すとなかなかな短絡的な発言だったな、と思うのだけども。
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なんて。こちらを見て、目を逸らして。
随分とそっけない言葉だった。
無言ではなかった。あのぶっきらぼうな言い方は適当に返したんじゃなくて。
こちらの無自覚の傷に触れないように、上げた手を下げてポケットへしまうような言葉。
この人は、その気になれば自分に触れられる。
ただ、自分が許容できないから、気を遣ってくれているだけで。
そういうところだ。
こちらのことをよく把握していて、俺が無自覚の部分にまで気を遣わせている。
与えられるけど、許容できない。それは一方的に攻められても反撃の手は許されない、試合ならあまりにも不平等すぎるルール。
それをこの人は受け入れてくれている。自分のエゴを押し付けるのではなく、こちらのことを大切にしてくれている。
寝る前に考えていた。
触れられていたら、受け入れられていた?
多分、触れられたら耐えられなかった。手を払いのけていた。
手を払いのけていたら、関係性や感情が疑われる。
だからこの関係性を甘受するには手を引っ込めることは合理的だ。
気遣いだったかもしれないけれど、あの人のためでもある正しい対応。
払いのけたと思う?
払いのけたでしょ。あの言葉の真意を聞いて、安心したじゃん。
誘っておいて乗ってきたら突っぱねるなんて、不誠実な子。
……本当に?
本当だよ。
じゃあ、なんで。
あのとき、私は少しでも期待した?

戦いのときほどじゃないけれど。
身体を巡る血を送り出す音が、やけにうるさいと思った。
日記25
「テンタティブのことは虐めてないよ?」
「反撃がないから好き放題やってるたけで」
―― 確かに自分はこう言った。
いつもの何でもない、他愛のない会話。
「反撃があったって好き放題やるだろお前」
そう、言ってくるから
「えっ?
反撃を期待していいのか?」
―― する度胸があるの? その気があるような言葉ですぐに赤くなるあなたが?
……揶揄いの言葉のつもりだった。あるいは、軽い挑発だったかもしれない。
自分から行く分は平気だったから、己の傷が視野に入っていなかった。
思い返すとなかなかな短絡的な発言だったな、と思うのだけども。
「あーあー、勝手に期待しとけば良いんじゃねぇの?
時が来たらやってやるよ」
なんて。こちらを見て、目を逸らして。
随分とそっけない言葉だった。
無言ではなかった。あのぶっきらぼうな言い方は適当に返したんじゃなくて。
こちらの無自覚の傷に触れないように、上げた手を下げてポケットへしまうような言葉。
この人は、その気になれば自分に触れられる。
ただ、自分が許容できないから、気を遣ってくれているだけで。
そういうところだ。
こちらのことをよく把握していて、俺が無自覚の部分にまで気を遣わせている。
与えられるけど、許容できない。それは一方的に攻められても反撃の手は許されない、試合ならあまりにも不平等すぎるルール。
それをこの人は受け入れてくれている。自分のエゴを押し付けるのではなく、こちらのことを大切にしてくれている。
寝る前に考えていた。
触れられていたら、受け入れられていた?
多分、触れられたら耐えられなかった。手を払いのけていた。
手を払いのけていたら、関係性や感情が疑われる。
だからこの関係性を甘受するには手を引っ込めることは合理的だ。
気遣いだったかもしれないけれど、あの人のためでもある正しい対応。
払いのけたと思う?
払いのけたでしょ。あの言葉の真意を聞いて、安心したじゃん。
誘っておいて乗ってきたら突っぱねるなんて、不誠実な子。
……本当に?
本当だよ。
じゃあ、なんで。
あのとき、私は少しでも期待した?

「――……っ、」
戦いのときほどじゃないけれど。
身体を巡る血を送り出す音が、やけにうるさいと思った。