RECORD

Eno.710 ナティルノイア・メイラースの記録

気持ちの整理

 
「びっくりした」んだと思ってたし、自分の意見を堂々と言えない、から言葉が出てこないんだと思ってた。
もっとちゃんと、言い切れる何かがあるのなら、胸を張っていられるんだと、漠然と思ってたけど。

そうか。こわかった、のかもしれないな。
……思ったよりも単純な話。
シトルーに連れ出されて、気が付いた。

草原では私の歳で嫁ぐことだって珍しくはないけど、ピィたちの世界では、ノアの言ってることは正しい、んだと思う。
出会ったばかりでよくわかってないのに、そうでなくてもいろんな事情だってあるのに、そんなに軽々に決めていいのか……っていうのも当然の心配。

自分が思ってることをはっきり言うピィも、私たちに中立的な立場を取ろうとして、見たことないくらい感情的になってしまったサンちゃんも、別に悪くなんかなくて。
それは、わかって、いるんだけど──
でも、……いつも仲のいいみんなが、あんな風に言い合うのを見るのには。
少しだけ、がんと来た、ところはあって。

ドーニャは……どうだろう。よかったね、とは言ってくれたけど。
いつの間にかいなくなってた。
……ピィは、大丈夫かな。寂しがりだから。少し離れただけで、気にするくらい。
いつもだったら、一緒に席を立って帰るか──そうでなくても、ちゃんと挨拶して別れるのに。
私は……あそこで抜け出したおかげで、自分の中だけで考えるのとは別の形で、少し気持ちを整理できた気がするけど。
これはシトルーのおかげ、かな。

人に言われてはじめて気付くこと。
声に出してみてようやく、自分の中で形になるもの。
……気持ちを言葉にするのって、むずかしいな。