RECORD

Eno.809 フレイムスカージの記録

竜の言葉

フレイムスカージは、あまり良い竜ではなかったよ。
我々にも自分達の土地というものがある。君達の言葉で、縄張りと呼ぶものだ。

ああ、縄張りで構わないよ。
君達が私達に対して、獣と同じような言葉を使うのは知っている。
私達も、仲間内では君達に関し、様々な言葉を使うからね。

しかし、言語については本題ではない。フレイムスカージの話をしよう。

フレイムスカージは、我々の中でも特に縄張り意識が強くてね。
幼い頃に親が死に、己以外に身を護るものがいなかったせいだろう。
我々は、己以外の竜を見れば、威嚇し、そこが己の縄張りであれば追い出すものだが、フレイムスカージのそれは度を越していた。

逃げる相手を、縄張りの外まで追いかけて行って殺す。
一度敵だと感じたものに対する執着が、尋常ではなかったのだよ。

フレイムスカージが根城にしていた土地が、人間にとっても魅力的な土地だったのは、双方にとって不幸だろう。
君達人間が、フレイムスカージの怒りを恐れつつも、その地に住み始めてしまった事も。
……住めてしまった事も。

我々の時についての感覚は、人とは異なる。
だから、機嫌の良い時が十年続き、一度暴れて、また十年休むのなら、災害と変わりないだろう。
人が竜をそのように扱うのも、私は知っているよ。
諦めたつもりで耐えて、しかし、やがて我慢の限界が来るというのもね。

だから君達のしたことは、正当な事だ。
欲するものがあるのなら、戦って勝ち取る。それは竜も人も同じこと。
勝ち取った土地にもう人が住めぬのなら、痛み分けというところかな。

さて、語るべきことは語り終えた。
君も、人の国に戻りなさい。

しかし君は有能だね、私を探し当てるなんて。
竜騎士に使われていた竜なんて、きっと今では、ほとんど残っていないよ。