RECORD

Eno.58 ミオリッツァの記録

願い事




 雌雄は分かたれた。末永く生命を見守る母性をここに。
 日の権能は失われた。いと穏やかに君臨する陽光をここに。
 月の幻想は失われた。赤子を照らす柔らかな月光はここに。
 豊穣の契りは失われた。永久の実りある大地の約束をここに。
 裁定の木槌は失われた。厳かな審判を司る王の横顔をここに。

 

 そうして、俺は生まれの世界にを置いてきた。
 始まったのは長い旅路で、抱くのは朧げな夢。
 いくら捨てれば、この身は生命ヒトになれるのだろうか。

 だからね、君。
 救われておくれ。
 これはオレが終わるときに、そうあってほしいという願いなんだから。

 ああ、けれども。
 オレ程度の願いなど、霞ほどの価値もないか……。
 膝をつくほどのことではないが、哀しいことは確かだな。