RECORD

Eno.39 ウィーウムの記録

赤い花


本を読み、学ぶのが好きだった。
騎士たちの訓練に参加するのが好きだった。
城内をわが物顔で歩く猫たちが好きだった。
静かなティータイムが好きだった。
晴れた空に砂が舞うのが好きだった。
遠くに霞む山と森を見るのが好きだった。
豊かな街を見下ろすのが好きだった。
繊細な花器が好きだった。
優美な彫刻窓が好きだった。
窓のそばの赤い花が、好きだった。



宿の部屋に飾った赤い花を、一輪。
手に取って花弁に触れ、美しいと思う。

手を伸ばしても触れられるものはもうほとんどない。
たくさん下げた重りのなかで、それでも、
好きだったものたちはほんのわずかにあたたかい。
そんな気がしている。