RECORD
『天津風 ⅩⅥ』

カミール
「えっと、タルタニアさん。お願いがあるんですが、聞いてくれませんか?」

カミール
「私、もし上手くやれたらタルタニアさんのところに寄付をしてもいいですか?」

カミール
「そしてそのことを、フィリアちゃんには内緒にしてほしいんです」

タルタニア
「それは助かるが……しかし、それでお前が報われるとは私には思えん」

カミール
「私は……フィリアちゃんには、幸せでいてほしいから」

カミール
「私には確かに戦うための才能がある。
だけど、心はどうしても戦いには向いてなかったから」

カミール
「だから、私は私のできることをやろうって思ったんです」

タルタニア
「……そうか。あぁ、お前は随分と、強い人間だな」

タルタニア
「いいだろう。ならば、お前の好きにするがよい。
それで、お前が満足するのであれば付き合おうではないか」
―― 貴様を追って、カミールも家出をした。
ずっと気様のことが心配で、見つけるまで気様を探し回っていた。
貴様に会った後、こっちに来たタルタニアと話した。
貴様に強く当たられたらしいが、あいつはむしろ意を決したように我らの研究に協力するようになった。
力を貸してくれた理由を知っているか?
力だけが全てのこの場所を間違いだと考え、異を唱えてくれたこともあるが。
貴様が少しでも生きやすいように、この街を変えようとしたのだ。

ナハト
「―― ライブにようこそ。
姉に似て随分と可愛い外見だったから一目で分かった」

ナハト
「文献に準えた。これは失われた文明の再現。
まさか、そこから資金稼ぎに繋がるとは思わなんだがな」
ライブが終わり、戻ろうと思った。
隣にやってきた男の語る言葉が自分に向けられたものだと分かって聞いていた。
聞いて、しまった。
捨てられなくてずるいと、親に愛されて羨ましいと、才能を持って生まれて妬ましいと。
ずっとずっと、自分の境遇も、姉のことも、何もかも恨んで強くなろうとしたというのに。
誰かに必要とされるには、己自身に強さという価値がなければいけないと信じてきたというのに。

フィリア
「……んだよ……頼んでねぇよ……んなこと……」

フィリア
「頼んでなかった! 俺は俺で強くなって、あいつのこと見返そうって!
ずっとずっと恨んで妬んで、そうやってずっと強くなろうとしたのに!!」

フィリア
「そんでいつか、俺の方があいつより強ぇんだって、
証明してやろうって思ったのに!!」

フィリア
「俺は無価値じゃねぇって!!
弱いままじゃねぇって、地面に頭つけさせたかったのに!!」

フィリア
「んだよ、それ!!
俺は、お前のこと、突き放して……顔すら見たくねぇって、なのに……」

フィリア
「……んで……姉貴は、」

「……俺をそれでも……守ろうと、してくれたんだよ…………」
試験で実力差を見せつけられたときでも、涙は流れなかったのに。
とめどなく溢れ続けて、全然止まらないや。