RECORD

Eno.367 フィリア・バルナルスの記録

日記30

彼は今までずっと嫌われていたと言っていた。
自分という一個人に随分と入れ込む。嫌われることを恐れる。
人がいいくせに、どこか一線を置きたがる印象があった。

だから、だろう。
「独り」なのだと勘違いしていた。


「昔ちぃと縁があってな。
 友人に首根っこ引っ掴まれてコンサート巡りさせられてたんだ。
 ここじゃちょうど良く使えるかもな、コイツも」



「いや、まぁ。なんか……。
 有能なくせにやけにオタク趣味なやつでな……



「推しがいたわけじゃねぇよ。
 オレはただ無理やり引き摺り回されてただけだし





心から、安心した。
どうやら彼は独りではなかったらしい。
振り回されてオタ活に付き合わされる友人が居た。
懐かしい、と呟いていたので故人なのかもしれない。人間の友達でもいたのだろうか。
そういえば部下に当たる神も居ると言っていたっけ。眷属とも言っていたし、案外人との繋がりは強いのだろう。

案外こちらのことも、初めて好きになった人ではないのかもしれない。
人生の中で何度も人を好きになり、見送ってきたのかもしれない。
だとしたら、あの人がどうしようもなく生きる者を優先してしまう気持ちも分かってしまうな。
いずれ訪れる別れ。己の終はまだまだ先。
故に、その人のために、つい肩入れしすぎてしまうのであれば。



「あいつの友好関係、興味沸いちまったな。
 前に掃除して一週間経つし、掃除ついでに聞いてみっか」



撫でてもらった(というより無理やり撫でさせた)感触を思い返し、無意識に口角が上がる。

別れが来たときに、独りに戻ってしまうのではないかと考えていた。
彼は耐えられないのではないかと、後ろめたさのようなものを感じていた。
だけど、そういった心配はいらないらしいし、彼も受け入れられるらしい。
……「こうなるつもりはなかった」も、もしかすると。
もう二度と、三度と、好きな人を作る気はなかった、ということなのかもしれないな。
どうしようもなくあの人は、人が好きなのだろう。可愛らしいなと思う。

私の思い上がりでよかった。
前にアヤトに説教したのがちょっぴり恥ずか……いや、合理的に考えた結果の印象だ。私は悪くない。


ほんの微かな時間だけでも。
彼の中で、いつか「懐かしい」と。穏やかに振り替えられる思い出になりますように。

1ページだけでも。彼の物語を彩るための、春色を残そう。