RECORD

Eno.102 Crescenteの記録

拝啓我らが美しい主様

……

我らが主神、我らが創造神様。
あの世界の外側で、お元気にお過ごしでしょうか。
私は、というものの。貴方の手から落ちてから月狂いへとなってからといってから…。

そう、そうですね。おおよそ200年程でございましょうか。
貴方を我らが主上として信仰しなくなってしまったのはソレ位の年月で御座いましょうか。

色々な事が御座いました。

貴方様が生み出した我ら『月詠み』…並びに同種族。
我らは貴方を『』として信仰し、逆に空に浮かぶ無数の『星々』として信仰する『星詠み』。
他者へ奉仕し、役に立つ事を誉とし。
死なない限り生き続ける不老不死の奉仕種族。
白き肌と月下美人の咲き誇る丘にのみ生まれる種族。
傷つけられても四肢がちぎれようとも再生し、そして割れた場所から漏れるは血肉ではなく
魔力を多大に含んだ魔石へと転換する魔法生物。
…ほかにも、沢山生み出された種族がいる、とは聞いてはおりますが、この話は一度隣へ。

貴方は、この狂った種族。…我ら『月狂い(つきぐるい)』星狂い(ほしぐるい)が生まれるのも織り込み済みだったのでしょう。
私が堕ちたとき、この月狂いという種族を一瞬にして把握してしまった。つまりそういう事でしょう。

『月狂い』

…、月狂い。そう呼ばれる種族の生まれは実は多い。
基本的に、生み出された種族自体は乱獲や密猟、奴隷販売などで希少だけれど
その中でも、月狂いとして種族の枠を外れてしまう子達は多い。

月狂いへなる方法は簡単だ。
主たる、星と月をつかさどる主神を信仰できなくなる事。
第一がコレ。

…本来の奉仕種族たるものであればそんな事考えられないのだ。
奉仕の最たるお方を信仰しないなどと。そういう生き物だから。
けれど、外れる子らは多いのだ。
それを、他の子らは『狂う』と呼んだ。

狂う対象は、それぞれだ。
何でもいい。とにかく自らの神以上にそのものを信仰すればいい。
簡単に聞こえる様なこの言葉も、私たち奉仕種族の中では常識がひっくり返る様なものだ。
絶対的な存在を凌駕するほど、それ以上に自分の根幹を揺るがす様な気持ちが
体を心を、自分のアイデンティティでさえ凌駕する。


……。
だから、私も狂ったのだ。




……だから、神様。
私は、もう貴方の事を信仰できない。
貴方の下へ還る事は出来ない。



「……。
あぁ、でも…私の神様ご主人様はまだ見つからない。」




…まだ、まだ見つからない。
…貴方に、会いたい。