RECORD

Eno.367 フィリア・バルナルスの記録

日記31

一晩止まって世話を焼いて。
その後自分の部屋に戻ってから、振り返る。


「…………なんか」


「後から段々腹立ってきたな…………」




掃除のために押しかけて、ついでに友人のことを聞いてやろうとして。
自分が恋愛的に好きなことは事実だったから、それを伝えて。
言われた言葉を反芻する。


「……そう、か。カカ。なんだ、その……。
 それが揶揄いでも、嬉しいよ。ありがとう、フィリア


「……前兆がなかったろ。それで好意投げられても、
 あいにく揶揄いにしか思えねぇよ」




なあ??? 俺の好意何で突っぱねられたの???
あいつなに??? 俺のこと好きって言いながら俺の好意は受け取りませんって???

なに??? 今度こそ俺フられた???
マジであいつ分からせてやるから覚えてろよ。




こんなに腹が立つのも。突き放されたように感じるのも。
少なくとも『本心』から伝えた言葉だったから。
決して軽い気持ちで伝えた言葉じゃなかったから……こんなにも、胸が詰まるような息苦しさを覚えて。

じゃあ、そういった行為ができるか、と問われると、できない。
無視できないほどの嫌悪感に襲われる。
間違いなく好きなのに。先の繋がりを求めようとすると、記憶が拒絶する。




「…………、
 ……………………え?」




手に雨が当たったような感触。
室内なのに。そもそも晴れていたはずなのに。
天井を見上げて、もう一度水滴が触れる。
泣いていると、そこでようやく気が付いた。
……泣くようなことだったのだろうか。もう一度、言葉を思い返してみる。

まるで胸の奥が膿むように、ズキズキと痛むだけだ。












「期待させたとこ悪ィが、ンなに方法ねぇよバーカ。
 『神になる』『諦める』『オレが死ぬ』の3択程度だ




寿命差によるこっちのボケカスドアホの方も考えなきゃいけないの、きついな……


まず、神になる。この選択肢を取るしかなくない? 1択なんだよ。
要するに自分が人ならざる者になって、同じだけ生きられるようになる。
……人ならざる者になることも、己の常識外の場所へ行くことも。正直、怖いというのが本音で。
じゃあ見捨てられるか? と問われると、答えはいいえになる。
だから、自分からは掲示できないけれど、与えられたなら受け入れるしかない。
嫌な言い方にはなるが、そういうことになる。
そのまんまを言ったら逃げたけど。あいつどんだけ覚悟ねぇんだよ。
何で一緒に居てくださいが言えねぇんだよ小心者が。



次、諦める。
あいつが死ぬまで、俺のせいで苦しめって?
マジであいつふざけんなよあんなにうじうじした内面を晒しといて一緒に居てくださいの一言も言えねぇのマジでなんなの。何でじゃあ自分だけが苦しみますってなんの。ボケが。
却下じゃクソボケドアホが。



次、オレが死ぬ。後追いすんなバカ野郎。
最早これはなに? 何でこの選択肢を与えられた?
何で俺に合わすの? これが俺の幸せになる選択肢として何で与えられたの?
あいつの思考回路どうなってんの? 怖すぎ。やばすぎ。命を粗末にするな。


と、一蹴にした。……けれど。
合理的に考えるのであれば。一番、『幸せ』かもしれない。

神の仕事というのは大変激務で髪を切る暇すら与えられない。
死を与える仕事は変わらないだろうし、環境が改善されるわけではない。
と、考えると1つ目の選択肢は、果たして幸せだと言えるのか。
この選択をすれば。私があの人に生きていてほしいという我儘を我慢して、平気な様を『演じれ』てしまえば。

死ねば。分からなくなるのだから。



「…………」




最良である答えは、分からないまま。
どれも、選びたくないなら。他の選択肢を探すしかない。