RECORD

Eno.367 フィリア・バルナルスの記録

日記34


長生きすることが、決して幸せだとは限らない。
獣心信仰のサヴァジャーが何らかの理由で戦えなくなった。
例えば腕がモンスターに食われただとか、病気で身体が不自由になっただとか。
そうなったとき、多くの者はすぐに死に逝くらしい。
戦えない事実に耐えられなくなり、誰も知らないところで自決する者もあれば。
急速に野性が衰え、突然の寿命を迎える者もいる。

己の力で肉を得られない獣が生き延びることができないように。
我々も。その理の通りに生を謳歌する。




後追いされるのは嫌だった。
一番『感情論を除外すると幸せ』な選択肢であることも癪だった。
生きられる生を放り投げられることも。死にざまを見られることも。
そういえば、獣は死にざまを見られたくないみたいな都市伝説があったっけな。

だからといって、自分が死んで生きてほしいか、と問われるといいえだった。
親しくなった人間の死を何度も見送ってきた。
長く生きてほしかったと吐き出された言葉を思い出す。
あの人は一人一人の縁をいつまでも追悼する。離別の傷を、新たなる始まりの区切りとして受け入れられない。
そんな人が、もし17万年も生きて初めて恋愛対象として好意を抱いた『特別』との離別を受け入れられるか?
抗精神病薬を服用している人間が、これを受け止めて前向きに生きていけるか?




一蓮托生、なんて普通なら絶対に突っぱねるだろうけど。
シオンとならむしろ願ったり叶ったりで、懸念していたことも全て解決できる。
人の枠組みの中で、人より長く生きる。人を辞めるわけではなく、人のまま生きながらえる。
彼だけを残すことなく、どちらかが死ねば共に死ぬ。
取りこぼさせることなく、お互いに死を迎える。
運命共同体と言ってしまえば随分と聞こえがいい。

呪いの名を持つ人と、呪いで繋がれる。
普通なら物騒な話なんだろう。だけど、どうしようもなく嬉しいと思っている自分がいて。




ほら。案外、盲目になるでしょ。私だって。