RECORD

Eno.367 フィリア・バルナルスの記録

日記38

「……うっ……うぅ……お姉ちゃん……お母さん、お父さん…………」


「家族が恋しくなってしまったか。
 捨てられた事実はなかなか受け入れられないものだからな」


「それが、幸せだった記憶なら殊更。
 お前にとっては、この間まで愛されて生きていたはずだった」


「それが偽りだったと分かっていても、恋しくなるものは仕方がない。
 自分が弱いからと責めるな。お前はよく頑張っている、足掻こうとしている」


「……タルタニアさんは……タルタニアさんの、お母さんと、お父さんは……優しい人だった……?
 それとも、タルタニアさんも捨てられた……?」


「……私の両親は、とても優しい人だったよ。
 私の野性が『こんなもの』だというのに、さいごまで見捨てなかった……少し、優しすぎたな」


「……そっか……野性ランクが低くても……愛されていたんだ……」


「フィリア。覚えておけ。
 どれだけ辛いことがあっても、どれだけ苦しいことがあっても。
 それでも死なない限り明日は来る


過去は変えられないが、未来は変えられる。
 どれだけどん底でも、誰もが這い上がる権利を持っている。
 決してそれを忘れるな




「……ほら、今日は私のおごりだ。
 ここのプリンは美味いんだ。食べてみろ」









―― 思い返せば。
私は、あの人の生きざまも、志も、強く影響を受けているのだと思った。

あの人も、私も、姉も。『明日』を信じている。
夜が明ける日を。日が登り照らされる日を。
明くる日と書くから、明日ということを。私たちは信じている。





P1 E-γ Newt。
γは薬物や病など、後天性の要因により特異種になったもの。

P1は、爪が伸びる、髭が生えるなど、何の野性か判断しづらい特徴の変化しかできない者のこと。
微かにしか特徴が変化しない憑依型を指す。



「あるいは野性に恵まれないながらも強さを望むならば、私が稽古付けてやろう。
 野性に頼らない戦い方は心得ているのでな」


「γは処方された薬などで、野性の性質が変異した特異種という意味だ。
 ランク1な上にサヴァジャーの戦闘において使用禁止とされる毒しか扱えない、
 どうにもならない野性を持っておるぞ」










今はもう、あの人の言った『さいご』の意味を正しく理解している。