RECORD

Eno.330 ユラカイト・イチヤの記録

宿の一室にて








宿の一室には、姿が同じ人物が二人いる。






水浅葱の長着を着る男がユラカイト・イチヤ、






青褐の長着を着る彼が永久 知一である。





彼は、フラウィウスのビーチで行われる夏祭りに向けて荷物をまとめていた。






「ある程度整ってきたし、なんか必要なもんは陰から取り出せばいいけど……
 …なんか、足りない気がするんだよなぁ……」








そんなことを呟けば、男が口を開く。






「のう知一、陰から物を取り出すのも良いが、カバンを身につけるのはどうかね?
 多少のオシャレだって満足できるものかもしれぬぞ?」








多少的外れではあるが、彼も納得した様子。






その時に男が物陰から一つの織物を取り出す。



…少し大きめのトートバッグだ。



シンプルではあるが、難解な文字を図形にした絵柄が刺繍されている。



ただでさえ、その文字は図形に近いというのに。


















「俺はこれほどしかできないが、是非とも楽しんでもらいたいのう。
 ……それじゃ、俺はまたモノマキアに向かうでの」




















彼が言葉を返す前に出て行ってしまった。






ただ一人だけとなった部屋の中で一言






「…ありがとうな」














そんな言葉が、籠って消えた。