RECORD

Eno.367 フィリア・バルナルスの記録

日記41

―― 愛逢月。七夜月。
7月のことはこのような名前でも呼ぶらしい。
どちらも七夕が由来しているのだと、七夕が終わってから知った。

7月7日に短冊に願い事を書くと、その願い事が叶うらしい。
とんだ夢物語だな、と思う。
そんなことで願いが叶ったら、あらゆる夢が叶いたい放題だし。
他人の力ではなく、自分の力で願いを叶えることに意味があるのにな、とは俺の感想。
ただ、夢の再確認や意志表明と考えれば。
あるいは思い出や奇跡の布石だと思えば。
そういった文化もありかもしれないな、とも思う。




シオンが身長欲しいとごねる姿をよく見る。

たまたま、こちらの身長とシオンの身長はほぼ同じだ。
ほんの少しだけ自分の方が小さいけど、誤差の範疇。
シオンは身長が大きくなりたいらしいけど、このままでいいのにな、と思う。
同じ高さから見える世界。同じ世界の見え方。
上下に視線を動かさずとも自然と目が合う。
高くから見渡せる世界が好きで、ある理由から飛ぶことに憧れがあった。
満月の夜の、海上に連れていったときのあの嬉しそうな顔。
だから何度だって、空へ連れていきたいと思っていて。



14歳。成長期は終わっている。
けれどそこから全く成長しないわけではない。
身体は緩やかに成長を続ける。もしかしたら追い越す可能性だって残ってる。
小さい方があたしにとっても俺にとっても好都合。
可愛げを生かすには小さい方がいい。
今の戦法は素早く小回りが利く身体の方がいい。
鍛えても見た目では分からない身体に生んでくれた両親には、この点だけは感謝している。


身長を追い越したからといって、嫌われるようなことはないのだろうけど。
素直にこちらのことを見れなくなりそうで、ちょっとやだなと思う。
これ以上はさほど大きくはならないだろうから、視線の高さが大きく変わるってことはないはず。
シオンの背が伸びる可能性? 17万年以上変わんないんならないでしょ。






短冊に願いを書きたい気持ちがちょっとだけ分かったかもしれない。
どうしようもないことは、それこそ『神頼み』になるのだろう。
自分の力では叶えられない願い事。せっかくだし、書きそびれちゃったそれをここにこっそり書いておこう。


私の身長がこれ以上伸びませんように。
同じ景色をずっと一緒に見ていられますように。














お揃いは便利な言葉だ、と言いながら。
私がお揃いであることに喜んでいる。