RECORD
日記42
捕食者の顔を向けられただけだったなら。
人食いの話を聞いただけだったなら。
食肉としての品定めをされただけだったなら。
『二人』として貶されたような発言をされただけだったなら。
強いショックを受けて。動揺して、恐怖して、そうして憤怒、なんて。
よかった。自分がランク1で。野性を客観視できるから。
自己判断で、事件につながる前に眠らせられる。
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「発狂症の応急処置ってあるじゃないですか」
「あぁ、野性が異常活性したときの話だろ?
睡眠薬で眠らせてからヒーラーに引き渡す。そんで正常化させてから目を覚まさせる。
サヴァジャーの常識だな」
「流石、よくご存じで。
あれって、一応24時間程度で起きる強さの物が一般流通しているのですが。
私、あれ常々疑問に思っているのですよ」
「自然に起きるようにするのってバカなのでは? と」
「おう暴論が始まったな」
「冷静に考えてください。
凶暴な獣を眠らせて、そのまま討伐が間に合わなければ目を覚まして暴れ始めるのですよ。
そちらの方が死人出ません? 治すまで起こすな起きるな」
「人の命を奪う危険性を加味しての調整じゃなかったかそれ?」
「この調整のせいで、途中で起きてしまったりそもそも症状が重すぎて眠らない者もいるのが事実。
スドナセルニア地の殺人理由第1位が発狂症に襲われて、ですよ?
手を打つべきではありませんか?」
「それ以外の殺人がそもそもそう滅多に起きねぇだろーがよ」
「というわけで私は作りました」
「作ったのか」
「人間も野性もまるごとおやすみ!
私が作るきつけ薬を処方するまで目覚めません!
今なら注射タイプもあります!」
「うわぁ~~~使われたくねぇ~~~」
「名前はR.I.P錠と命名しました」
「ゴミクソカス最悪ネーミング」
「というわけで」
「どういうわけで」
「あなたにはこちらを常備していただきます」
「本気で言うてる?」
「使い方は変わらないので問題ないでしょう?
むしろこちらの方が確実で安全ですし、ちゃんとテストはしています」
「……誤飲したらマジで洒落にならなくね? これ。
あるいはお前が近くにいねぇときに使うことになったとか」
「えっ!? 後者はともかく薬物の誤飲!?
そんなうっかりをやらかすバカは救いようがないので生存をあきらめた方が健全ではありませんか!?」
「お前はしょっちゅう抑制剤と間違えて栄養剤飲んでたりするだろーがよぉ!!」
「はぁ~ しょうがありませんね。
起こす手段はない方がいいのですが、方法を書いておきましょう」
「そういや眠らせた後は情で起こさせねぇよーに、
それ専用のきつけ薬はヒーラーと医者以外持つことを禁止してんだっけ」
「はい、ですから本当はこれすら通用しないほどに眠らせる方が賢明なのですが。
どこかの誰かさんが誤飲をするかもしれない愚か者らしいですから、しかたなく対処法を書いておきますよ」
「誤飲すんのは主にお前なんだよ」