RECORD
別世界の闇にて 6
この日記には、
・一部ショッキングな表現
・不穏な要素
が含まれています。
直接的な表現を避けるようにしていますが、閲覧する際は自己責任でお願いします。
…男がしばらく暗闇を歩けば、奥からわずかな灯りが見える。

「…灯り。となれば、アマテラスの野郎か」
しかし、男がふと疑問に思った。
知一に憑いた神格は10体。
親玉であるアマテラスにスサノオ、イザナギにイザナミ、ヤマタに5柱の龍神。
これまでの道中、出会ったのはヤマタ1体のみ。
アマテラスは待っているとして、あと8体と出会わなければおかしいのだ。
「…嫌な予感がする。単純に自己消滅をしたならばよいのだが、
そうでなければ……」
男は大番長と闘争類の力を解放する。
腕からは浅葱色に輝く鎖が、背中からは3対の棘が生える。
意を決した男が、その奥へと進んだ__
そこにいたのは、神格の骸に立つ神々しい容貌をした歌姫だ。
体はいくつものプログラムで構成され、情報の伝達によって形を変えている。
間違いない、あいつがアマテラスだ。
相手もこちらの存在に気付いたようで、振り向いてから口を開く。
「11100011 10000010 10001000 11100011 10000001 10000110 11100011 10000010 10000100 11100011 10000001 10001111 11100110 10011101 10100101 11100011 10000001 10011111 11100011 10000001 10001011 11100011 10000000 10000001 11101000 10000000 10000001 11100011 10000001 10000100 11100011 10000001 10111100 11100011 10000010 10001100 11100011 10000001 10101110 11100011 10000010 10100100 11100011 10000011 10000001 11100011 10000011 10100100 11100011 10000010 10001000」
そいつの口からは、プログラムによって改竄された言葉が流れ出る。

「いつになっても変わらないんだな……
…お前をぶん殴る前に一つだけ聞いてやる。こいつらはどうしたんだ?」
聞き取れたかわからないが、アマテラスが口を開く。
「11100111 10100111 10000001 11100011 10000001 10101110 11100101 10001010 10011011 11100011 10000001 10101111 11100011 10000000 10000001 11100101 10000101 10101000 11100011 10000001 10100110 11100011 10000001 10010011 11100011 10000001 10000100 11100011 10000001 10100100 11100011 10000010 10001001 11100011 10000001 10101011 11100110 10001010 10010001 11100101 10001000 10110110 11100011 10000001 10010101 11100011 10000010 10001100 11100011 10000001 10100110 11100011 10000001 10000100 11100011 10000001 10011111」
「11100011 10000001 10100000 11100011 10000001 10001011 11100011 10000010 10001001 11100011 10000000 10000001 11100111 10100111 10000001 11100011 10000001 10101110 11100110 10001001 10001011 11100011 10000001 10100111 11100110 10010110 10000011 11100011 10000001 10010111 11100011 10000001 10011111」
「11100011 10000001 10011101 11100011 10000001 10010111 11100011 10000001 10100110 11100011 10000000 10000001 11100011 10000001 10010011 11100011 10000001 10000100 11100011 10000001 10100100 11100011 10000010 10001001 11100011 10000001 10101110 11100101 10001010 10011011 11100011 10000010 10010010 11100101 10000101 10101000 11100011 10000001 10100110 11100111 10100111 10000001 11100011 10000001 10101110 11100011 10000010 10000010 11100011 10000001 10101110 11100011 10000001 10101011 11100011 10000001 10010111 11100011 10000001 10011111」
「11100011 10000010 10000010 11100011 10000001 10000110 11100011 10000000 10000001 11101000 10101010 10110000 11100011 10000001 10101011 11100011 10000010 10000010 11101000 10110010 10100000 11100011 10000001 10010001 11100011 10000010 10001011 11100011 10000001 10010011 11100011 10000001 10101000 11100011 10000001 10101110 11100011 10000001 10101010 11100011 10000001 10000100 11100101 10010100 10101111 11100100 10111000 10000000 11100111 10100101 10011110 11100011 10000001 10101000 11100011 10000001 10101010 11100011 10000001 10100011 11100011 10000001 10011111 11100011 10000001 10101110 11100011 10000001 10100000」

「あー、聞いた俺がバカだったわ……
とにかくお前を斃すだけだっ!!」
居合より速いスピードで距離を詰める。
しかし相手は神格、それよりも速くプログラムを展開する。
そして男が気づいた時には、アマテラスの手には名刀“クサムラ”もとい、宝剣“クサナギ”が握られていた。

「いや複製はズルくない…?
いくらあなたの物だからって、それ俺が持ってたやつなんですけど……」
そう言いながら、加速させた拳をアマテラス目掛けて突き出す。
それにつられた腕の鎖が、神速で刀を絡め取る。

「阿呆が!そっちに意識を取られたな!!」
刀を投げ捨てられたアマテラスは、隕石が落ちたような衝撃をこめかみで受けた。
いくらプログラムの群れとはいえ、実体を持たなければ自我が崩壊するため、物理的な接触が可能だ。
しかし、パンチを受けたアマテラスは男の腕をプログラムで巻き込む。
その次の瞬間、男の前から嵐が吹き荒れる!
たまらず男は背中の棘を飛ばしてプログラムを破壊し、巻き込まれた腕を引き離す。
背中から出血をするが、棘の再生によってすぐに止血された。

「この風、スサノオの奴だな……
お前、こいつらの力を取り込んだってことかよ?」
男が天に手を翳す。するとそこに次元の穴が現れて大剣が出る。
…はずだった。

「…ッチ、プログラムで私物化するのはダメだろ。
これだってお前本来の力じゃねぇだろ?」
その次元の穴は、プログラムによって塞がれてしまった上に、
アマテラスの超次元へと繋がるゲートとなってしまった。
切り札であった武器の取り出しも出来なくなった男は、少しずつ焦り始める。
「仲間を斃してまで力を飲み込む奴がいるかよ……」

「…こうなったらヤケクソだぁっ!!歯ァ食いしばれ!!」
自棄となった男が何回も拳を打ち込もうとする。
しかしそれらは全てアマテラスの妨害によって空振りへと終わる。
そして、刀を拾い上げたアマテラスが斬りかかり始める。
男は拳だけで刀をいなしながら、背中の棘を無数に飛ばして迎撃するが、
アマテラスは棘の群れを私物化し男に返してしまう。
不規則に飛ぶ棘を躱しきれず、無理な動きをし続けた男はついにアキレス腱を切断した。
「っで!しまった!!」
そこへ間髪入れずにアマテラスの袈裟斬りが入る!
「ガァッ…ッハ……」
かなりの深傷を負った男は、超獣の力を消失させてしまい前へ倒れる。

「くそっ!!クソォ!!!!」
「ちっくしょうがぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
目の前にいる、数十年の因縁のある敵に打ち勝つことができないとわかってしまった男が叫び、涙を流す。
なんで、なんで。
なんでなんだ。
もう、勝てないのだろうか。
そう考えた時、男は懐から何かを感じた。
そこに力が残った手を入れると、何やら硬く、でも柔らかい物がある。
__彼が、知一が折った紙飛行機だ。
その紙飛行機からは懐かしく、しかし忘れてしまいたかった雰囲気が漂う。
それが何なのかを理解した男が呟き始める。
「…俺は、あいつを」
「知一を助けられるなら、夢幻の無に堕ちても構わない」
「それで俺が虚無に囚われて助からなくても……」

「知一だけは、絶対に生かせてやるんだ!!」
そう叫んだ男が、紙飛行機を破り捨てる。
破られた紙飛行機が地面に落ちた途端、そこから無が生まれ始めた。
その無は、徐々に大きさを増して男を呑み込もうとする。
「あいつの約束は破らないと、誓ったのだが……」
「これは仕方がないこと…仕方がないんだ…………」
「…すまない、知一、みんな」
「こんな自己中な俺ですまない……」

「俺はもう……戻れないかもしれない…………」
男が無に呑まれて消え、しばらくの静寂が流れる。
もう戦いは終わったと理解したアマテラスが背を向ける。
その時、背後から何かの気配を感じ取った。

背後を見れば、取り憑いた永久 知一に似た男が、虚無の仮面を被って立っていた。
__じっとその場に立って、あなたの様子を伺うように首を傾げている。