RECORD

Eno.367 フィリア・バルナルスの記録

『天津風 ⅡⅩⅡ』

フィリア
「……俺さ」


フィリア
「ダオドラを出ようと思ってる」


フィリア
「ここじゃなくって、
 カルザニア王国でサヴァジャーとしてやってこうって思ってんだ」




悩むことなく決断した。
タルタニアと姉と、それから施設の皆の前で話した。


タルタニア
「……そうか、ついに巣立ちの時、か」


タルタニア
あぁ、行ってこい。お前は充分、もう一人でやっていける




それを止める人は誰一人としていなかった。
思っていた以上にとんとん拍子に事は進み、二週間後にはダオドラを経つことになった。
惜しむ声こそあったが、全員が背を押してくれた。施設を出て独り立ちする。何も珍しいことではなく、むしろ当たり前のことだ。





カミール
……うん。いつか、お別れになるんだろうなって思ってた」


フィリア
「お別れっつーほどでもねぇだろ。
 カルザニア王国からダオドラまで、その気になりゃ数日でたどり着く。
 条件が整ってりゃその日のうちに行ける距離だっての」


カミール
「ふふ、そうだね。
 風に乗ってあちこち行けるフィリアちゃんの特権だね」




フィリア
「俺さ。憧れができたんだ」


フィリア
「姉貴みてぇに夢を見せたい。輝いて自分を貫いて行きたい。
 野性なんざ弱くたって強くあれるんだって証明したい」


フィリア
「そんで俺は、ずっと高ぇところにある――『月』を、目指したい


フィリア
「―― どうしようもなく、ワクワクすんだよ」




だからもう大丈夫。もう、守ろうなんて思わなくていい。
弱くてどうしようもなくて、心配かけるだけの妹じゃなくなったから。
人見知りで怖がりだった自分はもういない。
ただがむしゃらに強くなろうとして、戦うことに意義を見出せなかった日々を変えてくれた。

もう、私は風に乗ってどこまでも行ける。


カミール
「……強くなったね。本当に、強くなった」


カミール
「あのね、フィリアちゃん。私は、フィリアちゃんが幸せだったらそれでよかったんだよ。
 だけどね、それだけじゃダメなんだって、分かった」



「私も頑張るよ。私はここで、これからもこの街に抗い続けるよ」





それはお互いに、目指す未来の形は違うけれど。
未来の終着点は、それほど違わないと思うんだ。