RECORD

Eno.330 ユラカイト・イチヤの記録

別世界の闇にて 7








この日記には、

・一部ショッキングな表現
・不穏な要素


が含まれています。

直接的な表現を避けるようにしていますが、閲覧する際は自己責任でお願いします。

































それはあまりに突然であった。



音一つも出さずに、ただ最初からあったように、男はその場で立っている。






「」








…男は一言も話さず、ただ首を傾げてアマテラスを見る。



いや、見ているかすらもわからない。



男の顔を覆う仮面は、無限に続く無を作り出すかのように暗く、

表情の一つや二つを伺うことができない。






「11100100 10111101 10010101 11100011 10000001 10001100 11101000 10110101 10110111 11100011 10000001 10001101 11100011 10000001 10011111 11100011 10000001 10001011 11100011 10000001 10101010 11100011 10000001 10101001 11100011 10000000 10000001 11100111 10011111 10100101 11100011 10000010 10001011 11100101 10111111 10000101 11101000 10100110 10000001 11100011 10000001 10101111 11100011 10000001 10101010 11100011 10000001 10000100」



「11100100 10111011 10001010 11100101 10111010 10100110 11100011 10000001 10010011 11100011 10000001 10011101 11100011 10000000 10000001 11100011 10000001 10011101 11100011 10000001 10101010 11100011 10000001 10011111 11100011 10000010 10010010 11100110 10111101 10110000 11100011 10000001 10011001 11100011 10000001 10111110 11100011 10000001 10100111 11100011 10000001 10100000」








改竄された言葉を無機質に呟いたアマテラスは、イチヤとの距離を詰めて袈裟斬りを行おうとした。












…しかし、その刃が通ることはなかった。






いや、厳密には確かに通った



男を見れば、斬り裂いた箇所には傷が一つも付いていない。






男…知一の本来の力は『ゲンムエンペラー』を得ていて、

その力を使う者自体が無になることが一番の特徴である。







アマテラスが何度もクサナギを振り回しても、傷は一つも付けられない。






勢いよく一太刀を浴びせようとした時、男がアマテラスの腕を掴む。



次の瞬間、アマテラスからシステムエラーの警報音が鳴り響く。






なんと、男はアマテラスの腕をなかったことにしている。



掴まれた腕は、指先から手首へと消え始め、クサナギはそれに気づいてから地面へと落ちる。



瞬きする前に腕を引き剥がそうとするが、男自体が無であるため離すことができない。






その抵抗を見た男は、もう片腕を手刀にして肩を叩く。



そうして刀を握られた方の腕は完全に離れ、やがては消えていった。






アマテラスはもう片腕を使って刀を持とうとするが、

同様に引き離され、刀は踏み消されてしまう。






もう敵わないと考えたアマテラスは逃走を試みる。



しかし、男の力は無限大である。

すぐ近くまで引き寄せられ、無限大のパワーをこめた拳でねじ伏せられてしまう。






地面に一尺ほど埋められたアマテラスは、プログラムを展開して立て直そうとする。



それを男が見逃す訳もなく、プログラムの結果を全て「null」に書き換えた。






もう成す術がなくなったアマテラスは、首を男に掴まれ頭部をひたすらに殴られる。






男はありもしない表情を一つも変えずに、殴る。



ありもしない感情を一つも変えずに、殴る。



ただ、殴る。



殴る。



殴る。



殴る。






意識を失う前に、せめてもの一矢報いようと考えたアマテラスは、

最後のプログラムを実行して男の拳を弾き返す。



自分の拳を顔面に受け、その仮面が一部剥がれると、男の顔が露出した。

























そこにあったのは、光を逃すことも許さない、ブラックホールのような虚な目であった。






その目を見られた男は、掴んでいた首を思い切り握り潰す。












…それから、アマテラスの首と体は完全に切り離された。



そして、それぞれは徐々に無へと還っていった。



















親玉のアマテラスとの戦いに勝った男は、その場で崩れ落ちるように倒れる。






夢幻の無を取り込んだ男は、ただ何もすることもなくうつ伏せになっている。






男にはもう、感情がない。



男にはもう、記憶がない。






男にはもう……存在する意味がない。
























すると、地面に落ちた紙飛行機が動き出す。






それは二つに破れたまま、空を飛び始める。






男の体から、瘴気のような無の力が抜け出ていく。






それらは紙飛行機へと群れ、紙飛行機は自己修復をする。

その過程で、無は紙飛行機の中に囚われていく。












しばらくして紙飛行機は元の状態に戻り、男も元の姿に戻る。