RECORD
『天津風 ⅡⅩⅢ』

タルタニア
「カルザニア王国に行く前に、お前にこれだけ伝えておこう」

タルタニア
「この世界でどういうやつが一番強いか。
圧倒的な野性という先天性の才能を持つものか。憧れに向かってひたむきに努力ができるやつか。
そのどちらでもない」

タルタニア
「強さに貪欲で、強くなることに理由がないやつだ」

タルタニア
「そういうやつを、『天才』と言うのだよ」
この世界で生きる以上、野性の本能を宿して人々は生活をする。
その本能を満たすために人々は戦い、見世物とする。
本能に便乗する者。律する者。反対する者。利用する者。
心の方針という名の信仰を芯に、あらゆる人間が生きて、衝突して、力を合わせていく。
ここは、そういう場所だ。

フィリア
「俺には強くなる理由がある」

フィリア
「姉貴はあのクソみてぇな街を変えようとしてる。
あの街で、戦い以外の道を示そうとしてる」

フィリア
「俺は野性ランクが低いやつだろーが強くなれるってことを証明したい。
カルザニア王国での戦闘は世界中に配信される。
ダオドラで戦うよりも、よっぽど影響力がある」

フィリア
「変えたいんだ。弱い野性だからって諦めちまうやつを。
戦いに向かない野性だからって可能性を否定しちまうやつを。
上手くいかねぇかもしれねぇって不安がっちまうやつを」

フィリア
「姉貴とは別のやり方だけど、俺も姉貴みたいに立ち向かいたいんだ。
あんな風に輝いて、魅了して……俺から目を逸らせなくしてやる」

フィリア
「チョウの羽ばたきがいつか嵐になるように。
俺達のちっぽけな叛逆で、いつかの未来で何かが変わればいい」

フィリア
「そんで、いつかどこかの未来で」

フィリア
「俺に感化された天才ってやつに会って、俺の夢を託してぇんだ」

フィリア
「弱い野性だろーが、てっぺん取れるってな」
「決まったー!
これが本当にR1の、それもウサギの強さだと言うのかー!」

フィリア
「みんな~! 応援ありがとぉ~!
たっくさんの応援があったからフィリアちゃんはこんなにも頑張れちゃった!」

フィリア
「カルザニアに来て全然間もないあたしだけどぉ……
これからも、たっくさん応援してね~!!」
「なんか、どえらくキャラが濃いやつが来たな」
「あたしムリ。あざとくって見てて腹立つ」
「けどR1とは思えないくらいにいい動きしてたなぁあいつ」
「めちゃくちゃイラッと来た。
何なのあいつマジでさっさと誰かにぶちのめされてほしい」

「…………」

「……すごいな。R1 W-Rabbitって思えない戦い方してた」

「俺もいつか、カルザニア王国で同じ場所に立てるかな」

フィリア
「あっはっはっ! 批判の方が多いなぁ!
いいねぇいいねぇ、いっそやる気が沸いてくるぜ」

「さ、次は何の大会で暴れてやろうかな。次こそ骨のあるやつを頼むぜ?」
―― これにてもう一人のウサギの物語はこれで一旦終わり。
天駆けるウサギが良き友人に恵まれることは。
それから、彼女にとって『転機』が訪れることは。
そして、本来は登場しない『月を止まり木とするカラス』との出会いは。
もう少し、先の未来の話だ。